歯列矯正治療とは，歯並びをきれいにする治療のことである．この治療は，ワイヤなどの矯正器具を用いて，微小な力を歯に負荷させることで歯列を整える．近年，矯正治療を受ける人々が増えているが，人によっては過荷重などによる治療事故が起きてしまう可能性がある．

これは，矯正器具によってどの程度の力やモーメントが歯に負荷されるのか解明されていないためである．現在の矯正治療は力学的な評価がなされておらず，歯科医の経験や感覚に依存して治療が行われてしまっている．

先行研究にて，矯正治療を定量的に評価できる装置がいくつか開発されている．しかし，力のみでモーメントが測られていない物や，実際の治療器具の取り付けが困難な物など，測定機器として未だ不十分な物ばかりである．

そこで，本研究では矯正治療を定量的に評価することを目的とし，模擬歯列と6軸力覚センサを組み合わせることで，歯に加わる力やモーメントを計測することができる装置の開発を行っている．

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近年，食生活の欧米化などにより大腸がんの罹患数は増加傾向にある．大腸がんは早期に発見できれば，治療で切除可能で根治率も極めて高い．そのため，症状がなくても定期的に検査を受けることが重要である．大腸内視鏡検査は，内視鏡を肛門から挿入し，大腸内を医師が直接観察する検査である．早期発見に繋がりやすいが，内視鏡挿入には高度な技術が要求されるため，医師には大きな負担となっている．そこで，内視鏡検査の自動化が期待されている．

昨年度までに，自走式大腸内視鏡の実現に向けて，図のようなワイヤによる湾曲や空気圧による伸縮といった駆動機構を備えたデバイスを開発した．このプロトタイプの動作を検証したところ，緩やかに湾曲した大腸モデルであれば，挿入方向に自走できることが確認された．現在は，より人間の大腸に近いモデルで自動挿入できる機構を検証している．

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こちらの研究では，体育施設機器器具メーカーであるセノー株式会社さんと協力して，体育館の床面に関する研究をしています．ウレタンの膜厚と摩擦抵抗に関する研究や，床面画像の合成に関する研究があり，現在では綿を用いた体育館床面のささくれ傷を自動検出する装置の開発を行っています．

体育館では，間違った管理や施設の老朽化によって，床板の劣化が進んでしまいます．そのような中で，活動中に床板からはがれた木片が体に刺さり，入院を余儀なくされる事故例も報告されています．この様な床板の異常を発見するために，定期的な検査が手動で行われていますが，これには人的，時間的なコストが大変かかります．

この問題について，経路生成や画像解析を用いて，ささくれ傷を自動検出する装置の開発を行っております．

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現代の日本では糖尿病の疑いのある患者が10人に1人以上存在する．更にその中でも3人に1人が糖尿病神経障害と呼ばれる疾病を患っている．この疾病は悪化すれば足部の壊死や切断につながり，治療は困難を極めるが症状が軽ければ，医薬療法等で治療が可能である．

しかし現在の検査手法では非常に多くの手間がかかる．したがって従来とは異なる検査手法で糖尿病神経障害の早期発見が可能な手法の確立が期待されている．糖尿病神経障害の患者は足部の血流が悪くなる事，発汗量が減少する事，足裏の皮膚が硬くなる事が先行研究で明らかになっている．

本研究では，柔らかい床と硬い床での足裏と床の接地面積の差を用いて，画像処理から数値化し比較する事で重症度を判定する手法を提案した．また血液や汗の吸光特性を利用し，足裏に光を照射して吸光波長の差を調べる事で重症度を測定する方法も提案した．現在は提案手法の有用性を検証するための実験を行っている．

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現在，乳牛一頭当たりの乳量も伸び悩んでおり，今後も全体の生産量は減少していくことが懸念されている．乳牛の栄養状態は乳量に多大な影響があると考えられており，適切な栄養状態の管理をするためのシステムの開発を早急に行う必要がある．

ボディコンディションスコア（BCS）は，体表面の形状により1～5の0.25刻みで評価される家畜の体脂肪蓄積状態を表す．特に乳牛においては，単なる肥満度の測定ではなく，泌乳の各段階に応じた適切な摂食管理のための重要な指標となる．しかし，BCSは熟練者が1つずつ手動で決定しており，牧場内全ての牛を測定するには多くの時間と労力がかかってしまう．そこで，3次元レーザースキャナを用いてBCSを自動で計測できる高精度なシステムを開発することを本研究の目的としている．

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変形性足関節症は，日常生活に支障が出るほどの痛みを伴う足首の関節症である．変形性足関節症の病態の解明のためには，足の2本の骨（脛骨と腓骨）の相対的位置関係を分析しなければならない．

近年，変形性足関節症患者のこれらの骨の関係を調べる研究が報告されている．それらの研究ではCTやX線などの医用画像を使用して骨の関係を分析している．しかし，これらの医用画像は2次元画像であり画像正面方向の変位量を算出することができない．3次元的に解析すれば正面方向の変位量が算出可能である．

以上を踏まえ，本研究では骨を3次元モデル化することで、変位量を測定する研究を進めている．また，この技術を活かし外反母趾の研究も行っている．

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動物を用いた研究は基礎研究から新薬開発などの応用研究に至るまで重要な役割を果たしている．しかし，現状では実験者の目視で観察や評価が行われることが多く，長時間の観察や目で追えない動きの解析は不可能であること，観察者の拘束時間や疲労が大きいこと，評価の客観性に欠けることなどの問題がある．また，特にマウスは古くから利用されている動物モデルであり，マウスを使った動物実験の評価の自動化が必要とされている．

既存の手法として上方から撮影した動画から特徴点を追跡するものや，モーションキャプチャシステムを利用するもの，マウスの３次元形状から手足の位置を推定するものなどがあるが，コストや手間，精度，3次元的な動きに対応していないなどの問題がある．

そこで本研究では簡易的かつ高精度なマウスの3次元姿勢推定手法を提案することを目的とし，RGB-Dカメラ1台でマウスを下方から撮影し，深層学習を使った動画上における特徴点追跡と深度情報を組み合わせることで，マウスの3次元姿勢推定を行うことのできるシステムの開発を行っている．

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歩行解析は医療分野で重要視されており，高精度での計測が必要な臨床現場では三次元動作解析装置（Three Dimensional Motion capture system: 3DMC）が使用されている．しかし3DMCを用いるためには広い空間が必要であることや反射マーカーの貼り付け時などに専門知識が必要となるため，簡便とはいえない．また，3DMCの代替手法として，簡易さを重視した解析を試みた先行研究は散見されるが，光の変化の影響を受けやすいこと，関節角度の推定誤差が非常に大きいこと，などの欠点がある．

そこで本研究では単一のRGBカメラを利用して，一定の精度を持ちながらも簡易な歩行解析をすることを目的としている．

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近年，自閉症スペクトラム障害（ASD）のような発達障害特性を持つ人は多く存在していると考えられている．しかし，自身が発達障害特性を持っているとは知らずに生活し，社会生活に支障をきたす事例が多く存在する．そのため，正確な診断からASDの特性を正確に把握し，対策することが重要であると考える．

また，ASD特性を持つ人は，相手の動きを観察し，他人の意図を予測することが得意でないと言われている．

そのため，本研究の目的は，相手の動きの方向を予測し，避ける必要がある「すれ違い動作」における特性の違いを脳科学的アプローチから解明することである．今後は，写真のような簡易脳波計を用い，ASD特性に関する知見を明らかにしたいと考えている．

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近赤外(near infrared : NIR)光は可視光よりも長波長の光であり, 人間の目には見えないが多くの物質に対して優れた透過性を持つことで知られている. 特に1100 nmから1350 nmの波長域では水やヘモグロビンによる光の吸収・散乱が最も小さいため, 生体深部の観察に適している. 生体深部情報を有する近赤外スペクトルを画素に割り当てて可視化する技術を近赤外ハイパースペクトラルイメージング(NIR-HSI)という. 内視鏡外科手術の一つである腹腔鏡下手術で用いる硬性内視鏡にNIR-HSIが出来る光学系を搭載することで, 生体深部にある目では見えない腫瘍や神経, 血管などを識別できる可能性がある.

本研究では国立がん研究センターと協力し, 近赤外カメラ及び光源・フィルター等の光学系の設計及び, C++やLabVIEWを使用したデバイス制御プログラムの開発, 機械学習による組織識別精度の向上等を行っている. 開発したNIR-HSI腹腔鏡デバイスを用いて, 臨床検体や動物検体での撮像を行い, 手術中の使用を目指す.

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高齢者介護施設では人手不足が問題となっており，介助行為や見守りを行っていない状況下での事故が多く発生している．また，見守りセンサなどが実用化されつつあるが既存のものは転倒を検出するなどの単純な機能がついているだけのものが多いのが現状である．

効率的で適切な介護を行い，事故を未然に防ぐためには,高齢者の日常の行動を細かく把握する必要があり，これを介護職員,高齢者の負担を増やさないように自動で行えるシステムが必要とされている．

本研究では，実際の介護施設の個室に一台のRGBDセンサを設置し，得られた個室内の3次元データと高齢者の骨格情報から，高齢者の行動を把握するための分析手法を開発する．ベッド，タンスなどの個室内に設置された家具と高齢者の関係から，高齢者の行動を把握した．

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現在，自律移動機能を有するロボットの研究開発・商品化が盛んに進められている．掃除ロボットや自動アシスト機能付きの自動車は，ロボットの自律移動技術を製品に落とし込んだ例で，製品化され普及している．一般的にロボットの自律走行のために事前知識として環境の三次元地図が与えられる．

事前地図の作成にはSLAM (Simultaneous Localization And Map-ping)と呼ばれる手法が用いられるが，SLAMは逐次移動量を推定し軌跡を作成するため，原理上誤差が累積することが課題である．特に，屋外などの大規模の地図をSLAMによって作成する場合，誤差累積によって大きな歪みが生じる．

本研究の目的は，ロボットの自律移動における経路計画・目的地生成に電子地図情報を利用し，観測範囲によらず電子地図に一致した3次元地図を作成し精度の良い自己位置推定を目指す．

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近年，自律移動ロボットは搬送・清掃・警備などのサービスを目的に開発されている．日常生活空間ではエレベーターやドアなどの踏破のために移動以外のタスクを要する瞬間がある．それらの踏破のため，自律移動ロボットにマニピュレータを搭載する方法がある．

自律移動ロボットに搭載するマニピュレータはコンパクトさと複数のタスクが可能で障害物に干渉しない自由度の高さを持つマニピュレータが必要になる．しかし多くのタスクや自由度の高さを想定するにしたがってマニピュレータのコンパクトさがなくなってしまう．

そこで本研究では直動運動可能な関節を用いてそれらの両立が可能なマニピュレータの製作と制御法の提案をし，自律移動に必要なタスクの踏破を目指している．

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生物組織の働きを理解するうえでその組織の構造を合わせて把握することは重要であり，生物の組織構造を十分に理解するには電子顕微鏡を用いて3次元観察を行うことが求められている．

しかし，現在商用で販売されている電子顕微鏡内で3次元観察を行う装置は大型で，この装置を搭載可能な電子顕微鏡は制限されている．このことを踏まえ，汎用な電子顕微鏡にも搭載可能な小型の切削装置の開発が求められている．

そこで本研究はで電子顕微鏡を用いて3次元観察を行う小型の装置の開発と改善を行っている．この装置は観察試料の切削と観察を連続して行うことで3次元観察を行う．この切削装置は電子顕微鏡内で観察試料を数十ナノメートル単位の切削が可能である．

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