「生命保険数学」 の講義について (富澤貞男) 東京理科大学
私の専門分野は「数理統計学」ですが,「統計学」の授業以外にも「生命保険数学」の講義も担当しています.
本科目はアクチュアリー資格試験科目に関する内容です.本講義では,「生命保険数学(生保数理)」を数学的理論 そして下記のような具体例をわかりやすく解説します.
具体的な講義内容は ここから ご覧ください.
学生の皆さん,関心ある方は是非受講してください.
(参考)「アクチュアリー」の詳細は, 日本アクチュアリー会 をご覧ください(過去の問題も掲載されています).毎年12月にアクチュアリー資格試験が行われ,5科目(「数学」,「生保数理」など)に合格する必要があります.科目「数学」は確率・統計,「生保数理」は生命保険数学です.なお,かなり難しい試験です(合格率は日本アクチュアリー会の「ニュース」からご覧下さい).
(以下は講義で説明します)
(Q1): 1000万円を年利率5%,複利で運用したら,5年後の元利合計はいくらですか?
(Q2): 年利率7%,複利で運用し10年後に1000万円を得たいとき,今,いくら用意すれば良いでしょうか?
(Q3): 100万円を名称年利率5%,複利での利殖を考えます.ただし,半年ごとに利息を元金に組み入れるとします(半年複利).このとき,7年後はいくらになっていますか?
(Q4): 年利率5%,複利で毎年始めに10万円ずつ10年間積み立てたら,10年後はいくらになっていますか?
(Q5): 20歳からの公的年金である国民年金の保険料は毎年いくら払う必要がありますか? また国民年金の支給開始年齢になったら毎年いくらずつ支給されますか?
(Q6): 国民年金にかなり近いかもしれませんが,仮に次の「K年金」を考えてみましょう.このK年金は,20歳から60歳未満まで年金保険料を毎年19万8千円ずつ,40年間払い込む場合,65歳から終身(つまり,本人が死亡するまで),毎年79万5千円ずつ年金を受け取れるとします.この場合,40年間で満額払い込んだ保険料はいくらでしょうか.また,65歳から年金を受け取り始めて,75歳,85歳,95歳,100歳まで長生きした場合,各年金総額はいくらでしょうか.(ただし,保険料と年金額は変動しないと仮定します).また,各年齢まで生存した場合の「利回り」は およそ どれくらいでしょうか.
(答え:40年間払い込んだ総保険料は 792万円. 一方,65歳から75歳までの10年間で受け取る年金総額は 795万円,85歳まででは 1590万円,95歳まででは 2385万円,100歳まででは 2782万5千円の年金を受け取れます. したがって 75歳までの10年間で受け取る年金総額は,40年間払い込んだ総保険料を超えることになります.長生きすればするほど,このような多くの年金が受け取れます.なお,利回りは年金を受け取って約10年後の75歳頃からプラスになって行き,長生きすればするほど利回りは大きくなります.詳細は講義で説明します).
(Q7): 債券(国債,地方債),利率と利回りの違い,クーポンレート(表面利率),償還,短期金利,長期金利,イールド,ゼロ金利政策,流通市場など; ニュース等で良く聞かれると思いますが,どのようなものでしょうか?
(Q8): 債券で,額面100万円,クーポンレート7%,5年で償還,残存期間2年で,この債券を80万円で買ったら,利回りはいくらでしょうか?
(Q9): 住宅ローン返済で,1000万円借りて,返済期間10年,毎月返済,年実利率5%の固定金利の元利均等返済でのローンを組んだ場合,毎月の返済額はいくらでしょうか? また毎月返済する際の利息分,返済元金分はそれぞれいくらずつでしょうか? 10年間の返済総額と利息総額はいくらでしょうか?
(答え:毎月の返済額は約10万5524円,返済総額は約1266万2880円; つまり 約266万円の利息を支払うことになります.なお,毎月返済で返済期間10年ですので,返済回数は120回です.最初のうちは利息が多いです.たとえば,借りてから1ヶ月後の第1回目の返済では,返済額10万5524円のうち,利息分は4万1000円です.2ヶ月後の第2回目の返済では,利息分は4万735円です.最初のうちは,かなりの利息を毎月払っていることになりますが,毎月少しずつ利息分は減って行きます.ちなみに 10年目の最終月の第120回目の返済では,返済額10万5524円のうち,利息分は431円です.なお,これらの値は,数学的な理論式で,たとえば,小数点以下をどこで四捨五入するか等で数値は若干違ってきますのでご注意下さい.理論も含めて詳細は講義で説明します).
(註) 上記の設定で2000万円借りた場合は,毎月の返済額や返済総額等はすべて上記の2倍になります.なお,通常は借り入れに関して諸費用がかなりかかってきます(たとえば,百万円単位で).
上記の設定で返済期間を10年でなく,たとえば,20年,30年に長くすれば,毎月の返済額はかなり少なくなりますが,返済総額はかなり増えます(利息総額が増えますので).
(Q10): 年金積立保険に25歳で加入し,毎年20万円の保険料を40年間払いました.その後,65歳から20年間年金を受け取るとき,年金額はいくらでしょうか? また20年間で受け取れる年金総額はいくらでしょうか? ただし年利率は5%とします.
(答え:年金額は,約193万8657円,年金総額は,約3877万3140円; 支払った保険料は40年間で800万円なのに受け取れる年金総額はこんなに多いです.講義では数学的理論に基づき説明します).
(Q11): 個人年金保険に50歳で加入,10年据え置いて,60歳から生存していれば毎年100万円の年金を終身受け取れるとすると,加入時の一時払い純保険料はいくらでしょうか? ただし予定利率は5%とします.
(Q12): 1年定期保険(死亡保険)に50歳で加入して,1年以内に死亡したら保険金1000万円が支払われるとすると,加入時の一時払い純保険料はいくらでしょうか? ただし予定利率は5%とします.
(Q13): 60歳で加入,保険期間10年,期末払いの保険金1000万円を受け取れる養老保険(生死混合保険)を考えます.すなわち,10年以内に死亡すれば,死亡した年度末に保険金1000万円が支払われ,また,10年後に生存していれば,保険金1000万円が支払われます.この場合,60歳加入時の一時払い純保険料はいくらでしょうか? ただし予定利率は5%とします.
(Q14): 住宅ローン返済期間中,借りた人(債務者)が途中で,死亡したとき,あるいは高度障害状態になったとき,残った借金が返せなくなると残された家族等は大変困ります.そのような場合,残った借金をすべてまとめて払ってくれるのが,(団体)信用生命保険です.住宅ローン返済と共にほぼ義務として信用生命保険にも同時に入ります.さて,もし,ローン返済中のある男性が40歳時点で残存元金(借入残高)が1500万円であるとき,年齢40歳での信用生命保険の1年間の保険料(自然保険料)はいくらでしょうか? 予定利率は5%とします.
(Q15): 男性のAさんが40歳で加入,保険期間20年,保険期間の途中でAさんが死亡したら その年末から受取人(家族等)へ毎年120万円ずつ確定年金が Aさんの年齢60歳まで支払われる保険(収入保障保険)を考えます.Aさんが毎年支払う同一額の保険料(年払い平準保険料)はいくらでしょうか? ただし予定利率は5%とします.もちろん,Aさんが死亡した場合は,それ以降は保険料を支払う必要はありません.