アレルギー炎症を制御する分子メカニズム

  1. アレルギーを制御する IL-4遺伝子の発現制御機構を理解する目的で、ゲノム上に存在する制御領域の働きを知るため、緑色蛍光蛋白GFPをレポーターにしたトランスジェニックマウスのシリーズを構築した。これらの解析から、いくつかの制御領域(プロモーター、HS2、サイレンサー、HS4、CNS-2)の存在が明らかになりました。その一つ、CNS-2領域はリンパ濾胞型ヘルパーT細胞(TFH)メモリー型CD4T細胞やNKT細胞等におけるIL-4産生を、Notchシグナルを介して制御する働きがある事が分かってきました(Immunity,2004, Immunity, 2006, Immunity,2007,Immunity,2012,)。

  2. IL-4遺伝子の転写制御領域を更に解析する目的で、それぞれの制御領域をゲノムから欠損させたマウスシリーズを作製しました。この解析からアレルギー反応に関わるサイトカインIL-4の遺伝子座上に、Th2マスターレギュレーターである「GATA-3」が結合するHS2領域を同定した。従来から、「GATA-3」がどうのように複数のTh2サイトカイン遺伝子の産生スイッチを同時に制御するのかそのメカニズムについては不明であった。複数のTh2サイトカイン遺伝子がクラスターで存在する遺伝子座を包括的に制御する機構が提唱されていました。我々の研究から、異なるTh2サイトカイン遺伝子には、それぞれ「GATA-3」が結合する遺伝子配列が存在することが明らかされ、それぞれのTh2サイトカイン遺伝子は独立して、制御されていることが証明されました。そのため、HS2欠損T細胞は、IL-4を産生すること無く、IL-13やIL-5を発現できます。HS2欠損マウスでは、IL-4を産生できないため、喘息やIgE産生などのアレルギー反応を全く起こさなくなりました(Nature Immunology 12, No.1、77-85, 2011)。一方、最近我々のグループでは、TFHでIL-4の産生を制御している領域として、IL-4遺伝子座下流に位置する制御領域、CNS-2を同定しました。この領域は抗体産生特に、アレルギーに関わるIgE抗体を作る上で重要な働きを持つことが明らかにされました(Immunity,2012)。炎症反応を沈静化する分子メカニズム

    炎症反応を抑制するサイトカインIL-10の発現が、時計遺伝子の転写因子E4BP4によって制御されていることを発見し、免疫反応の沈静化に働くメカニズムを解明しました。IL-10を産生するT細胞として、もっとも代表的な細胞はTh2細胞であるが、NKT、メモリーT細胞、制御性T細胞など様々なT細胞がこのサイトカインを産生する。ところが、E4BP4欠損マウスでは、いずれの細胞からのIL-10も顕著に減弱していました。また、慢性炎症状態ではTh1から IL-10やIL-13が可塑的に産生されるようになり、この産生もE4BP4によって制御されています。また、E4BP4欠損マウスは様々な自己免疫性大腸炎・自己免疫性多発性硬化症などの自己免疫性疾患を起こしやすくなります( Nature Immunology 12、No.5:450-459, 2011)。



 

 

 
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