液晶分子の形状
液晶状態を示す分子はどのような形をしているのだろうか?よく知られているものは、ラグビーボールのような楕円形の棒状分子と呼ばれているもの。
液晶テレビで使われている液晶分子の大半は棒状分子です。
棒状分子の典型例
最も一般的な棒状分子の液晶として「5CB」があります。5CBの正式名称は「4-Cyano-4'-pentylbiphenyl」といいます。
2つのベンゼン環の骨格に、シアノ基と、4つのCH2が付いた分子ですね。
5CBをはじめとして、液晶分子というのは、このような有機高分子材料になっています。

あくまで典型的な例としてですが、液晶性を示す分子というのは、
・硬い骨格
・柔らかい側鎖
・極性基
を持っていると言われています。
これらの要素はなぜ必要なのかということを考えると、
・硬い骨格 = 方向の秩序を持つためには、変形しない硬い骨格が必要
・柔らかい側鎖 = 流動性を持つためには、硬い部分だけでなく、柔らかい部分も必要
・極性基 = 配向分極を示すためには、電場や磁場に応答するための極性が必要
ということなのだと思われます。
言い方を変えると、無機材料などでは、柔らかさはありませんし、
低分子材料では、骨格に側鎖まで持たせることが難しいといえます。
つまり、有機材料でかつ、高分子材料であることが、液晶材料になるための、必要条件となるわけです。
※十分条件で無いのは、液晶性を示す有機高分子材料が限定されているからですね。
様々な液晶分子
では、棒状液晶以外にも液晶の形はあるのでしょうか?実はいろいろあります。ここでは代表的なものをいくつか紹介します。
ディスクの形をした円盤状分子
特徴的な光学特性を示すことから、 液晶テレビに使われている位相差フィルムでよく使われる液晶分子です。この円盤状分子が円柱状に積み重なった液晶相を、カラムナー相と呼びます。
バナナのように曲がった形をしたバナナ形分子
英語でも「banana-shaped molcule」と書けば「バナナの形をした分子=バナナ形分子」となります。その特徴的な形から、様々な特異な性質を示します。
最も特徴的なのは、その形状を利用して自発分極を発現させることができる点でしょう。
T字に分岐したT字形分子。
バナナ形と同じように特殊な形状であるT字形は、特性も同じように特異です。分子形状が複雑であったり、特徴的であれば、性質も特殊であり、特徴的になっていきます。

高分子液晶
さて、分子形状の違いの他に、分子の集合体としての液晶として、高分子液晶を紹介します。高分子液晶は、液晶性の分子が鎖のように繋がったものです。
高分子液晶には主鎖型と側鎖型の2種類があります。
主鎖型は、分子の液晶骨格が高分子の主鎖と同じ方向を向いています。

側鎖型は、分子の液晶骨格が高分子の主鎖から分岐した側鎖にぶら下がっています。

さて、いろいろな液晶分子を紹介しましたが、化学合成の専門家は、日夜新たな分子を創り出しています。
今日も、世界のどこかで新たな形状の液晶分子が合成されているかもしれません。