イオン密度測定
液晶材料に含まれる不純物イオンを調べる測定方法としてイオン密度測定というものがあります。その名のとおり不純物イオンを調べるものですが、その原理から液晶セルの容量値や、抵抗値も分かります。
また、強誘電性液晶の研究を行う上で必要となる自発分極の大きさについても調べることができます。
イオン密度測定では、三角波の電圧を印加して、その時に流れる電流を取得します。
三角波の電圧を印加した時の、典型的な電流波形は下図のようになります。

このグラフを、横軸を印加電圧、縦軸を電流としたグラフに書き直すと、次のようになります。

グラフから分かるように、液晶分子はある一定電圧(閾値電圧)で、分子配向が変化を始めます。
この分子配向(ダイレクタの向き)の変化を、フレデリクス転位とも呼びますので、
分子配向が変化し始めた電圧の地点を、フレデリクス転位点と呼びます。
フレデリクス転位点において、ダイレクタが変化(回転)するということは、
電場の向きに対する液晶の誘電率に大きな変化が起きることを意味します。
誘電率が変化するということは、容量値が大きくなるので、観測される電流も大きくなります。
不純物イオンは、一般的に小さく移動しやすいので、ダイレクタが動き出す電圧よりも小さい電圧で動き始めます。
よって、電圧をかけ始めて、イオンが動き、そのあとに液晶分子が配向変化するという流れになります。
したがってグラフでは、イオンに由来するピークが検出されたあとに、ダイレクタに起因するピークが現れます。
イオン密度はこのイオンピークの面積を測定することで算出することができます。

さて、では、副次的に容量値や抵抗値が測定できる理由を説明します。
VHRのときと同じく、液晶を抵抗と容量が並列につながったものとして置き換えて考えます。
抵抗と容量に流れる電流は、以下で示す式で表すことができます。

三角波を用いているため、dv/dtは、実験条件から計算することができます。
そのため、印加した電圧、測定された電流値、dV/dtの3つから、上記の式を根拠として抵抗が計算できます。
一方、容量は電流値の差異から下記の式で計算することができます。

また、自発分極の大きさですが、ダイレクタのピーク部分の面積として測定することができます。
イオン密度もそうですが、ピークの検出は手作業になってしまうので、どの部分をピークと考えるか?ということを、
あらかじめ決めておかないと、解析する人によって結果が大きく変わってしまうこともあるので、注意が必要です。