・研究室紹介


地震の際の建物の動きは、地盤が軟らかいか硬いかによって大きく影響されます。中でも地震動は地盤条件により大きく変化します。近年の観測記録でも、わずかな距離の違いで地震動の大きさが倍半分以上異なる場合が多く見られます。地盤の動きと建物の動きがお互いに干渉することによって、建物の基礎を単純に固定と考えたときの動きとは変わってきます。このように建物の耐震性は地盤の影響を大きく受けることになるため、地震国である我が国では、その影響を明らかにすることが重要となります。当研究室では、地盤の問題を中心に、地震の発生から建物応答挙動までを一貫とした耐震問題や振動問題に取り組んでおります。

研究紹介

近年の地震被害を教訓としたパルス状の地震動予測の高度化研究

1995年阪神・淡路大震災時には、神戸の中心部で6000人を超える犠牲者を出しました。その多くが「震災の帯」に集中しています。「震災の帯」は直下の震源断層から発生するパルス状の地震波と、神戸市直下に潜む段差状の地盤構造による増幅が成因となっていることが明らかになっています。複雑な形状の地盤構造は国内外の大都市に存在しており、今後、第2、第3の「震災の帯」の発生が危惧されます。このような現象は、現在の耐震設計における入力地震動策定に十分に反映されているとは言い難いのが現状です。本研究は、近年調査が進められている国内の地盤構造を整理し、地震動の増幅が予測される場所を特定することによって、将来発生する大地震時における被害を最小限に食い止めることを目的としています。

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1995年阪神・淡路大震災時の「震災の帯」


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東灘での高速道路の倒壊

高密度強震観測システムによる建物の振動特性の解明

地震時における建物の動的挙動は非常に複雑で,実際の耐震設計で用いられるモデルとその特性が大きく乖離している場合もあります。また想定外のレベルの地震が発生したときに,地震動がどのように基礎位置に入力するか、どのように建物が挙動するかは必ずしも全てが明らかになっていません。建物内に高密度の強震観測システムに配置し長期観測を実施することにより,中小地震時から大地震時までの動的挙動を精度良く把握し,より合理的な耐震性能評価に反映させることができます。2号館では高密度の強震観測システムが構築されており,今現在の建物の動きをオンラインで確認することも出来ます。
LinkIconこちらをクリック(学内のみ)


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           建築研究所の高密度強震観測システム                     2号館建物と設置した加速度センサ

地震の発生から建物応答挙動までの3次元一貫解析システムの開発

大地震時に建物に被害が生じる現象は、震源における断層面のすべり破壊、地震波の伝播、深部地盤による増幅、表層地盤による非線形増幅、建物基礎での入力変換、動的相互作用等、多くのプロセスを取り入れる必要があります。本研究では、このような震源破壊から建物の破壊過程に至るまでを解析的に評価する、3次元一貫解析システムの構築を目指します。たとえば、設定した断層パラメータ、地盤構造、表層の非線形特性が、建物の非線形挙動にどのように影響を与えるかをマクロに捕らえることにより、今後の入力地震動策定、耐震設計に反映すべき理想像を抽出します。

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上町断層帯による大阪平野内での地震波の伝播と地震動増幅域における木造密集地域

地盤の影響を考慮した構造物の耐震設計法の確立

2000年に導入された限界耐力計算法では、建設サイト直下の地盤構造の影響を構造物の耐震設計に直接取り入れるようになりました。実際に建物が作られる場所は崖地であったり、地中が傾斜層になっていたり複雑な構造を呈する場合も少なくありませんが、これらの影響を耐震設計に反映させる方法はまだ確立されていません。2007年改定建築基準法では、建物直下だけではなく周辺地盤についても調査し、必要があれば地盤の影響を入力地震動策定に反映させるようになりました。本研究では、複雑な地盤構造が建物への入力地震動に与える影響を評価するとともに、実際の耐震設計の運用でどのようにその影響を取り入れるべきかを検討します。

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運河・講義棟

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杭基礎支持の免震建物の動的相互作用と地盤震動

長周期地震動の発生メカニズムと超高層建物の動的応答

東京、名古屋、大阪などの大都市は、厚い堆積層で覆われた地盤上に位置します。このため、南海トラフ等でM8規模の巨大地震が発生した場合には、ゆったりとした揺れが極めて長い時間続く「長周期地震動」が大都市で発生し、超高層建物や免震建物に影響を与えることになります。長周期地震動は主に表面波と呼ばれる波が堆積層の中を伝わり発生します。本研究ではこのような表面波が発生するメカニズムを、震源から大都市の地盤構造を一体でモデル化した大規模3次元計算で調べます。震源、サイト間の関係を調べることにより、長周期構造物の耐震設計に用いる入力地震動の策定に反映させることができます。

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7号館に設置されている強震計と2003年十勝沖地震時に得られた野田キャンパスの長継続地震動(建築研究所提供)

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2000年鳥取県西部地震時の地震波の伝播と大阪平野の揺れ 神戸に建つ超高層RC建物



木造在来軸組工法の制振補強による構造物応答制御

 1995年に発生した兵庫県南部地震により、約21万棟の家屋が全半壊しました。6000人を超える死者のうち8割近くは建物の倒壊等によるもので、その9割が古い木造住宅でした。既存の木造住宅には、現行の耐震基準に達していないものがあります。このような既存不適格建築物には、耐震補強を行う必要があります。本研究では、木造軸組構法で建てられた建築物を想定し、粘弾性制振装置による制振補強を行った際の耐震性能を、シミュレーション解析により評価するとともに架構に対する影響を検証しています。

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粘弾性制振装置を含む木造軸組架構


液状化地盤における杭基礎構造物の地震時挙動

 2011年東北地方太平洋沖地震では、関東地方沿岸部を中心に大規模な液状化が発生し、建物が沈下・傾斜するなどの被害を受けました。液状化地盤では地盤の変形が過大となり、本来杭の変形を抑える役割を果たすはずの地盤が、杭を強制的に変形させてしまう場合もあります。その結果、杭が損傷・破壊してしまうケースも少なくありません。このように、液状化地盤では杭基礎の耐震性が極めて重要となります。本研究では、小型の地盤-杭-構造物の模型を用いた実験を行い、地盤が液状化した際の杭の応力や、液状化によって損傷した杭が上部構造物の地震時の応答に与える影響を検討します。実験は、京都大学防災研究所所有の遠心力載荷実験装置を利用して行います。これにより、模型に重力の50倍の遠心力をかけることで、模型の50倍の深さの地盤内応力状態を再現して実験を行うことが可能となります。

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       地盤-杭-構造物模型          遠心力載荷実験装置

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