高分子分散型液晶


高分子を用いた液晶セルの一つとして「高分子分散型液晶(PDLC)」がある。(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)
高分子分散型は、先の章で述べた「高分子安定化液晶」と原理はほぼ同じであるが、モノマーの混合量が非常に多いことが特徴である。 高分子安定化がモノマーの割合が数%の混合量であるのに比べ、高分子分散型は数十%という多量のモノマーを混合する事で作製できる。

PDLCは上図に示したような液晶のドロップレット(液滴)を高分子が包み込んだような構造をしている。
無電場の状態では、液晶分子はドロップレット内でランダムな方向を向いており、入射した光は散乱してしまう。 これは、高分子領域と液晶領域の屈折率が異なる事に由来する。
しかし、電場を印加した場合には、液晶分子の方向が揃い、入射した光をそのまま透過する事が可能になる。 これは、高分子領域と液晶領域の屈折率が等しい事による。

ではここからは、高分子分散型液晶(PDLC)の性質について少し話していこう。
通常の液晶セルは偏光板を挟み込んだ状態でのみディスプレイとして利用できるが、その偏光板のために光量の損失が生じる。 PDLCは偏光板を利用せずに応用する事ができるので、この点において非常に有利である。ただし、電場印加の有無で透過光の強度が異なるわけではなく、 透過の散乱度合いが異なるだけなので、ディスプレイとして明暗を表示させるには特殊な取り扱いが必要となる。

また、PDLCは高分子で液晶を包み込んだその構造により、ガラス基板を用いないでデバイスとして活用できると思われる。 つまり、固体容器の必要ないディスプレイなど、フレキシブルなデバイス応用が考えられる。
これに関連したものとして、液晶/高分子複合膜として盛んに研究されている物質も存在する。

[参考文献]
液晶便覧 丸善 液晶便覧編集委員会 2000

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