高分子安定化液晶


この章では、古江研究室の研究コンセプトのひとつ"高分子"を用いた技術のひとつである『高分子安定化』という技術をお話していきましょう。 高分子安定化とは、その名の通り「高分子」で「安定化」することです。しかし、高分子というものはほとんどの人が知っているものですが、 安定化という言葉の「安定」という事が非常に分かりにくいものです。これからモデル図を示しますが、図で示すような安定以外にも「安定化」と言うものは 存在するので、安定化というもののひとつの例として捉えてもらえると良いと思います。

上図に高分子安定化のモデル図を示しています。
液晶に液晶性モノマーを混ぜる事で、モノマーは液晶の配列にうまく入り込んで液晶の配列にしたがって同じように配列します。(図左)
この状態において電場を印加すると、液晶分子が電場方向へ配向し、それに伴いモノマーも同じように配向します。 電場を印加し、液晶分子とモノマーを配向させた状態でUVを照射し、モノマーをセル全体にわたって重合させてモノマーが結合した高分子にしていきます。(図中)
重合を行なうと、モノマーが結合していき、セル全体に渡って高分子ネットワークが形成されます。 このネットワークが形成された状態では電場を切っても高分子ネットワークの力によって、液晶分子と重合したモノマーが電場方向に配向したまま安定になります。(図右)

このようなプロセスによって高分子安定化は行なわれます。
ただし、電場を印加しない状態で高分子安定化をすることもあります。よって高分子安定化とは、「重合する前の配向状態を安定化するもの」と言えるでしょう。

上述したように高分子安定化を行なうことによって、配向方向をそろえる事ができます。この技術を強誘電性液晶に応用したものが高分子安定化強誘電性液晶です。

通常の強誘電性液晶セルでは、図左のように欠陥が多く発生するようなものが、高分子安定化などの技術を用いる事で図左のような欠陥の無い均一な配向を実現する事ができるようになるのです。

[参考文献]
小林駿介 責任編集 共立出版 次世代液晶ディスプレイ(シリーズ 先端ディスプレイ技術 B)

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