液晶分子の形状と種類
液晶分子は、第4の状態であると『液晶とは』の話で述べたが、どの物質でも液晶状態をとれるという事ではない。
一般的に液晶状態を取れる物質の構造というのが決まっている。
ここではディスプレイなどに応用されている一般的な棒状分子について述べていこう。

図に示したように、まず液晶性を示す物質の重要な構造の特性として、「堅いコア部」いわゆる人間で言う骨の部分が必要である。
この堅いコア部があるおかげで液晶が方向性つまり異方性を有することができるわけである。
また液晶の構造のもうひとつの重要な特徴として堅いコア部から伸びている「柔らかい側鎖」がある。
この柔らかい側鎖はほとんどの場合、アルキル鎖(炭素鎖)であり、そのアルキル鎖の柔軟性に依っている。
この柔らかい部分を有するために液晶は流動性を有していると言ってもいい。
つまり液晶は「堅い」性質と「柔らかい」性質の両方の性質を持つ非常に複雑な構造を有しているわけである。
複雑な構造であるからこそ、他の状態である「固体」「液体」「気体」のどの状態においても持つことができない液晶独特の性質が現れるのである。
ここまで棒状分子を例にとって液晶の構造を述べてきたが、では、「棒状以外の液晶もあるのか?」という事を説明していこう。 棒状以外の液晶は存在するか?答えはYESである。
ではここで次の図を見てもらいたい。

図に示したように棒状分子以外に円盤状分子というものも存在する。
ただ、液晶ディスプレイなどのような表示素子としては利用されていないため一般には馴染みが薄い存在ではあるが非常に重要な液晶なのである。
では、どんなところに円盤状分子の液晶が使われているのか?
ディスプレイ材料のひとつに位相差補償フィルムというものがある。簡単に言うと、光の色を調整するフィルムである。
そのフィルムに円盤状分子の液晶が使用されている。またこの他にも様々なところで円盤状分子は応用されている。
そして円盤状分子は図に示したようなディスコチックカラムナー相のような棒状分子とは異なる様々な複雑な相構造をとる。
次に高分子液晶について少しだけお話しましょう。
高分子液晶とはその字のごとく「高分子の液晶」である。これまで話してきた液晶は一般に「低分子液晶」と呼ばれるもので、構造を見てもらって分かったと思うが、分子量が数百程度であった。
高分子液晶はそれに比べ、分子量が非常に大きい。

図に示したように高分子液晶は、低分子液晶が繋がったような構造をしている。
低分子液晶と同様に高分子液晶も液晶性を示すためのさまざまな条件があります。
またサーモトロピック液晶とリオトロピック液晶も同様に存在する。
主鎖型高分子液晶はメソゲン基とスペーサーが交互に結合したものなどの構造が存在する。
それに対し、側鎖型高分子液晶は図を見ても分かるように側鎖にスペーサーを介しながらメソゲン基がぶら下がった構造をしている。
これら高分子液晶は液晶性を利用した高強度繊維のような製品に応用されている。
ここまでに紹介しただけでなく、バナナ形液晶や、T字形液晶など、さまざまな形状の液晶が存在し、さまざまな物性を示します。
そしてそれらの液晶材料は液晶ディスプレイ以外にも様々な分野で活躍しているのです。
[参考文献]
液晶便覧 丸善 液晶便覧編集委員会 2000
液晶とディスプレイ応用の基礎 コロナ社 吉野勝美,尾崎雅則著 1994