研究室について


医療安全学研究室紹介

~次世代の臨床薬剤師の育成を目指して~


1.処方提案できる薬剤師教育の充実

 厚生労働省「チーム医療の推進に関する検討会」の提言では、薬剤師による医師への積極的な処方の提案が望まれるとしている。これは、薬物療法の適正化への薬剤師の関与を期待したものであり、薬剤師を養成する大学も、この提言に応える必要がある。本学は2008年に、順天堂大学医学部がん生涯教育センターのがんプロフェッショナル養成事業の連携校として、MDアンダーソンがんセンターやヒューストン大学薬学部(以下UHと略)への見学の機会を得て、米国の実務家教員の活動について知ることができた。MDアンダーソンがんセンターの外来では、臨床薬剤師が医師と契約を結び、支持療法だけでなく化学療法の処方も可能となっている。
 外来では薬剤師はチームのメンバーとして専門的な協力関係を確立でき、様々な慢性または急性疾患への効率的、効果的なエビデンスに基づいた、患者中心の薬物療法を提供できる必要がある。
 そのためには、患者の病態からエビデンスに基づいた最適な処方を提案できる能力が必要となる。米国での臨床薬剤師業務を参考に、本学薬学研究科社会人博士課程の学生(薬剤師)と共に順天堂大学医学部付属順天堂医院乳腺センター外来において、臨床薬剤師業務を開始した。自らの臨床薬剤師業務経験を通じて、現在、6年制教育と卒後教育の両面から、次世代の臨床薬剤師の育成に向けた創成イメージを図1に示す。乳がんは薬物治療が主であり、外来における薬剤師の存在は乳がん治療の質の向上、ひいては患者の満足度向上につながり非常に重要である。



写真1.外来で医師と共に診療に当たる
「Outcome R6: 薬物の適正使用における信頼性のある情報を提供できる。」教育を充実させるために治療ガイドラインを学び臨床論文を批判的吟味する演習を立ち上げた。


  図1.次世代の臨床薬剤師育成のイメージ


2.処方提案に向けた臨床研究の実施

 次世代の薬剤師は処方提案する上で、薬学的問題を自ら解決してエビデンスを創っていく能力も求められている。薬の特性と用法が一致していないなど薬学的問題が存在する薬剤に置いて、適正使用に向けた日本人による新たなエビデンスの創成が望まれているが、医薬品の市販後は、問題が解決されないままとなっている場合が多い。そこで、多施設共同で、客観的な立場から市販後医薬品の薬学的問題を解決するために薬剤師主導の臨床試験を計画し実施している。



「Outcome R5: 薬学的問題解決に向けた臨床研究を実施できる 」を充実させるために薬学的問題解決に向けた臨床試験デザイン演習教育も立ち上げた。 今後は次世代の薬剤師の育成に向けた、日本に即した臨床薬剤師研修プログラムの創設に向けて尽力する予定である。