研究目的
 酸化タングステン(WO3)は光照射による可逆的な色変化であるフォトクロミズムを示す代表的な無機物質である。そのフォトクロミック特性は結晶性や受光効率に依存し、一般にアモルファス構造を有する粒子(膜)ほど向上することが知られている。一方、界面活性剤が形成する分子集合体を鋳型として調製されるメソポーラス材料は、均一な細孔径および均一な壁膜の厚さを有するため、高い比表面積を持つ多孔質材料として近年注目を集めている。このメソポーラス材料をWO3で調製することができれば、アモルファス構造を有する均一な厚さの壁膜となるため、フォトクロミック特性がより向上することが期待される。そこで本研究では、カチオン界面活性剤が形成する分子集合体を鋳型としてメソポーラスWO3を調製し、得られた粒子の物性について詳細に検討を行うことを目的としている。

将来の方向性
 酸化タングステンに均一なメソ構造を付与することができれば、新規フォトクロミック材料として調光材料や表示素子などへの応用が期待される。例えば窓ガラスに利用した場合、その透過率を変化させることで外部からの入射光量の調節が可能になるため、冷暖房や照明器具などのエネルギー負荷を軽減させ省エネルギーにも役立つと考えられる。

キーワード

 メソポーラス材料、酸化タングステン(WO3)、フォトクロミズム


関連装置

X線回折           →  規則的細孔構造および結晶性の解析
透過型電子顕微鏡       →  規則的細孔構造の観察
窒素吸着測定         →  比表面積の測定