研究目的
 生体膜の主要構成成分であるリン脂質により構成されるリポソームは、生体膜の基本構造と同様の二分子膜閉鎖小胞体であるため近似度の高い生体膜モデルとして盛んに研究が行われている。しかし、リポソームが溶液中に分散して存在する分子集合体であるため、その膜表面の相分離を生で観察することは困難である。一方Langmuir-Blodgett膜(LB膜)は、気液界面に形成した単分子膜を固体基板上に写し取った物であり、原子間力顕微鏡(Atomic force microscope : AFM)を用いることによって、ナノオーダーの観察が容易に行えると共に溶液中でのin situ観察が容易に行えることから、生体膜中における脂質/ペプチド間相互作用や、相転移の動力学的検討を行なう為のモデルとして盛んに利用されている。しかし、LB膜を生体膜モデルとして用いて得られた結果がリポソームや実際の生体膜モデルをどこまで再現出来ているかについては殆ど検討が行なわれていない。そこで本研究ではリン脂質二成分混合系のリポソームとLB膜、各々の表面をTEM、AFMを用いて観察し、相分離構造に着目することによって両者の相状態の差異を明らかにすることを目的としている。

将来の方向性
現在までに、ベシクル(リポソーム)とLangmuir-Blodgett膜(LB膜)という二つの生体膜モデルでは、二成分の混和性が異なるという結果が得られた。今後、混和性に寄与する因子を特定し、より生体膜に近似した且つ扱いやすい生体膜モデルを考案する。それによって生体膜の更なる機能解明や薬物送達システムに利用されているリポソームなどの設計に貢献できると考えられる。

キーワード

 生体膜、ベシクル(リポソーム)、Langmuir-Blodgett膜(LB膜)


関連装置

フリーズレプリカ作成装置    →  ベシクルの表面観察用試料作成
透過型電子顕微鏡(TEM)     →  ベシクルの表面観察
原子間力顕微鏡(AFM)      →  LB膜の表面観察
LB膜作成装置(表面圧計)    →  LB膜作成、表面圧-面積曲線の測定