研究目的
リポソームは生体膜の主要構成成分であるリン脂質から構成された人工のカプセルである。リポソームは細胞膜と同様に二分子膜構造を有しているため、二分子膜内部には油溶性物質、内水相には水溶性物質を取り込むことができ、さらに生体適合性が高いこと、体内で薬物を分解酵素などから保護しながら運ぶことができることなどから、薬物送達システム(DDS)の運搬体としての応用が試みられている。近年、リポソームにカチオン性物質を添加したカチオン性リポソームは分散安定性に優れるだけでなく、細胞やDNAが負の電荷を帯びていることから、これらとの高い親和性に着目した遺伝子治療における運搬体としての応用が期待されている。

将来の方向性
当研究室ではカチオン性リポソームの膜物性として、リポソームに少量のカチオン性物質を添加することにより、水溶性物質の保持効率が著しく増加することを見いだしている。しかし、カチオン性物質添加による保持効率上昇の要因については未だ充分に検討されていない。そこで本研究では、主に二分子膜間相互作用について小角X線散乱、小角中性子散乱、クライオ透過型電子顕微鏡などから検討することを目的としている。

キーワード

   カチオン性リポソーム、DDS、遺伝子運搬体、二分子膜間相互作用


関連装置

紫外可視分光光度計              →  保持効率測定
動的光散乱測定装置              →  粒子径、表面電荷の測定
示差走査熱量測定               →  相転移温度測定
透過型電子顕微鏡               →  二分子膜の直接観察
小角X線散乱 (SAXS)、小角中性子散乱 (SANS)  →  二分子膜間の相互作用を検討