アレルギー発症におけるサイトカインと
免疫レセプターのクロストーク機構の解明


背景: ヒトにおけるアレルギー疾患は年々増加傾向にあり、様々な環境要因ならびに遺伝的要因が関連する現代病とまでいわれるようになってきている。アレルギー反応は、獲得免疫機構に属するT細胞やB細胞に発現する抗原レセプターによるアレルゲンの認識を核として開始され、B細胞のIgE産生プラズマ細胞への分化を経て、最終的にアレルゲンーIgEによるマスト細胞に発現するIgEレセプターを介したヒスタミンやセロトニンなどの脱顆粒ならびに好酸球の組織への浸潤という自然免疫機能に属する細胞によって発現する。






アレルギー発症に関係する獲得免疫と自然免疫機構の相互作用は、主に自然免疫系の産生するサイトカインと獲得免疫系の産物である抗原特異的免疫グロブリン(Ig)によって仲介されているものと考えられる。すなわち、自然免疫に属する細胞から分泌されるIL-13IL-18などのサイトカインが、T細胞のTh2/Th1細胞への分化バランスの制御、B細胞のIg産生プラズマ細胞への分化の誘導といった形で、獲得免疫系へ影響を与える一方、プラスマ細胞の分泌するIgGIgEなどがマスト細胞や樹状細胞に発現するIgレセプターに結合することにより、これらの自然免疫系細胞に抗原に対する反応性を寄与することになる。これらのアレルギー発現に至る一連の自然免疫と獲得免疫の相互作用の過程で、特にIgおよぶ抗原レセプター(以下、免疫レセプター)のアレルゲンに対する反応性の亢進がアレルギーという免疫系の活性化異常状態の背景にあるものと考られているが、その分子メカニズムについては未だに明らかになっていない。


目的および戦略: 我々が現在中心に研究を行っているシグナル分子であるMIST(Mast cell immunoreceptor signal transducer)は、T細胞およびB細胞抗原レセプター下流で重要な役割を果たすSLP-76およびBASHと同じファミリーに属するアダプター分子であり、






当初マスト細胞に特異的に発現し、マスト細胞の
IgEレセプターを介した脱顆粒反応に関与する分子と考えられていたが、その後の我々の研究からサイトカイン刺激によってマスト細胞以外のT細胞やNK細胞などの血液細胞においてもその発現が誘導されることが判明し、サイトカイン刺激に伴い発現誘導されることによって、多様な免疫レセプターシグナルを調節することが推測されている。






したがって、サイトカインによるMIST分子の様々な免疫細胞における発現増強および発現誘導に伴う免疫レセプターの機能的変化が、アレルギーにおける免疫レセプターの反応亢進状態に関与している可能性が考えられる。そこで、我々が最近作製に成功したMIST遺伝子の翻訳開始コドンを含むエクソンにEnhanced Green Fluorescence Protein (EGFP)遺伝子をknock-inしたMIST欠損EGFP knock-inマウスを用いて、実験的アレルギーモデルにおけるMIST分子の役割について生体レベルで発現・機能解析を行い、「サイトカイン産生?MIST分子の発現増強?免疫レセプターシグナル伝達の増強?サイトカイン産生の増強」というサイトカインと免疫レセプターのMIST分子を介したクロストークがアレルギー発症に関与していることを明らかにする。




研究内容 〜マスト細胞〜

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