私にとて美とは何か?

 

 

声が代謝される 不安定な耳である

 

冷たい精液を分泌する青い舌である

 

鳥が低空飛行する霊感の迷路である

 

人間の中から滲みだしてくる痴的な虫である

 

ミカンの皮を剥く不条理な笑いである

 

命を速記する近視の死者の水晶体である

 

時速を持つ饅頭であり、北を指す指である

 

凍った花に訪れる幸福である

 

吹き替えられた神様の声であり、

水溜まりを越えるウサギの耳である

 

記号になって焼け落ちる鳥であり、

記号化されない寝言である

 

青空一面の 視力が回復する奇跡である

 

 

The depth of Ryo Goitsuka