B-1 光触媒実証実験棟の温熱環境測定
岩井 規泰 若松 義昭
光触媒の酸化チタンは超親水性(水を膜状に広げる性質)を持つ。光触媒放熱外装部材とは、光触媒を建築外装部材・窓材表面に塗布した部材である。夏季に、この部材表面に水を少量散水して水の膜を形成させることにより、水の蒸発冷却効果により外表面温度を下げ、室内温熱環境および空調負荷の軽減を計る。本研究は、光触媒放熱外装部材がどの程度外表面温度低減効果および空調負荷低減があるのかを、一般的な事務所に相当する実験棟にて実測を行ない明らかにすることを目的とする。
B-2 光触媒部位実験とシミュレーション
西原 猛 吉田 太郎
動的熱負荷シミュレーションプログラムに光触媒外装部材を組み込めるようにすることを目的に、光触媒外装部材の放熱特性の把握、外表面の水の物質移動係数・蒸発による熱伝達量などの熱物性値を定量的に明らかにする。本実測では実証実験等とは別の場所に光触媒外装部材を設置し、熱物性値推定のための精緻な計測を行う。これは、実証実験等における実測では、外装表面への送水量・還り水量などの精緻な計測が困難で、熱物性値推定に必要な諸実測値が(必要な精度で)得られない可能性が高いからである。なお、光触媒外装材は建物外部の鉛直外壁面に用いられると考えられるので、本実測においても試験片は鉛直に設置して実測する。
B-3 光触媒万博テント建物の実態調査
杉浦 直隆
最近、環境をテーマにした愛知万博が今年3月より開催される。環境テーマのひとつとして、光触媒を塗布したテント屋根に散水する。この蒸発冷却により冷房負荷を軽減し、温熱環境を改善する。このテント建物を実測し、シミュレーションを行い、電力量、CO2発生量の削減量を算出する。
B-4 最近の異常気象に関する研究
小西 輔
最近、日本国内でも世界的にも異常気象だと言われている。しかし、本当に異常気象なのだろうか。今年度は日本各地(代表的67地点を想定)の気象台で観測した長期の気温、日射量等の気象データを整備し、これら気象要素の経年変化より異常性を検討する。また、暑くなる都市気候は生活環境に及ぼす影響が大きいが、熱負荷計算プログラム(LESCOM)を用いた、シミュレーションにより、気温がどの程度上昇すると、環境が人間にとってどのように影響するのか。気温の変化とエネルギー消費量についてはどうか。また、室内温熱環境はどうなるかなど気候が建築環境に及ぼす影響を考察する。
B-5 空間制御ロジックシミュレーション
稗田 祐市
空調設備の性能と制御状態が室内環境や省エネルギーに大きく関係しているにも関わらず、性能評価は竣工時のメーカー側に委ねられた機会のみであり、その詳細内容はブラックボックスとなっているのが実状である。ライフサイクルコミッショニングはそのような状況を改善すべく、企画・設計・施工・運転・管理という建物の一生涯を考え空調設備の性能を検証することである。本研究では実建物で測定された日別年間データを用いて建物・設備の設計条件との比較・評価を行っていく。また今年度は鹿島建設にて開発されたコミッショニング法である「制御ロジックトレーサー」を用いた解析を中心に行っていく。
国際照明委員会(CIE)は国際昼光測定プログラム(IDMP)に基づき、昼光照度・日射量・温湿度・夜間放射および輝度などの測定を実施しており、2004年3月に10年余にわたる測定が完了する。それらのデータから照度または日射量を基準とした4種類の標準年気象データを作成したが、それぞれの特性や応用技術に関する研究は、十分とは言えない。そこで本研究では4種類の標準年気象データのそれぞれの特性を調べ、さまざまなシミュレーションに対し、どの標準年気象データを用いれば最適な結果が得られるかを研究することを目的とする。
B-6 画像呈示装置における空間再現性の研究
園家 孝太郎
建築や照明設計においてシミュレーション技術が活用される場面が増えてきたが、シミュレーション結果を視覚的に呈示する場合、その空間再現性レベルが問題となることが多い。モニターやスライドプロジェクタでは、絶対的な光量の不足、輝度レンジの狭さ、周辺光量の減少などのハード面の問題あり、実空間の視覚的環境を十全に再現できないためである。
本研究では、人間の知覚・心理的側面に着目して、画像呈示装置における照明環境(明るさ感大きさ感など)の再現性がどこまで保証されうるかを明らかにしていく。呈示システムとしては、大型平面スクリーンや半球ドーム型VRシステム(東京大学)を利用する予定である。
B-7 現象としての光の工学的条件に関する研究-空間色の表出
鈴木 千穂 出来 ひとみ
ここ数年建築会においては素材と光への注目が著しい。特に建物表層の物質性を消去するというテーマと密接に結びついているが、そのような試み自体は実は古くから様々な建築において実践されてきたことである。物質の素材感を消去し「光」を表出させるには、もの本来の特性:明度・粗さ・色度・形などの知覚を不安定にする必要があり、そのためには光・照明のコントロールが最重要課題となってくる。これまではその定量的・工学的な説明の試みはほとんどなされていなかったが、近年の視覚心理学における物体色・光源色知覚の研究の進展、情報工学分野における素材の物理指標化への研究の進展などにより、工学的に「光」表出のための解を与えることが可能となりつつある。
本年は特に「空間色」に着目し、その表出条件の検討を行っていく予定である。
B-8 昼光照度基準標準気象データを用いた照明シミュレーションの研究
大好 真人
建築分野でもコンピュータ技術の導入が進み、今後照明シミュレーションの重要性はますますまして行くと思われる。昨年度までに、国際照明委員会(CIE)は国際昼光測定プログラム(IDMP)に基づく、照度基準標準年気象データを作成した。これにより年間を通した照明環境予測が可能となってくる。本年度は、主にRadianceを用いて実際の照明シミュレーションへの応用を行う。さらに、空間内に必要とされる光量などの制約条件から、逆に空間形状を求める手法の検討を行うことにより、照明条件から初期スケッチモデルレベルの建物形状を得ることを目的とする。昼光照度・日射量・温湿度・夜間放射および輝度などの測定を実施しており、2004年3月に10年余にわたる測定が完了する。それらのデータから照度または日射量を基準とした4種類の標準年気象データを作成したが、それぞれの特性や応用技術に関する研究は、十分とは言えない。そこで本研究では4種類の標準年気象データのそれぞれの特性を調べ、さまざまなシミュレーションに対し、どの標準年気象データを用いれば最適な結果が得られるかを研究することを目的とする。