標準気象データと熱負荷計算プログラム LESCOM


                 武田仁・稲沼實・吉澤望・磯崎恭一郎
                     2005年3月 井上書院

 このたび開発に長期間を費やした熱負荷計算プログラムと標準気象データがまとまりましたので、一般に公開することに致しました。
 熱負荷計算プログラム(LESCOM)の開発と気象データの整備は車の両輪のようなものである。毎時の年間熱負荷がコンピュータで計算できるようになると、毎時の気象データが必要となり、両者の始まりは1960年代にさかのぼる。熱負荷計算プログラム(LESCOM)は最初、大型計算機で開発が始まり、その後、コンピュータはワークステーション、ノートパソコンと変貌した。現在はノートパソコンが主流である。演算のプログラム言語は、最初Fortranで始まり現在でも変わっていない。インプットが煩雑で初期の頃はミスが多かった。その後、インプット専用のプログラム(LESASSIST)をVisual Basicで開発し、インプットミスを極力直し、比較的誰でも容易に利用できるようになった。
 今回、LESCOMの一連のプログラムはソースコードを公開することで、誰でも内容を解読し、変更を可能にした。また、これら開発に伴った周辺プログラムも公開している。読者のご意見を頂ければ幸いである。
 気象データの整備は初期の頃、困難を極めた。気象庁観測の1時間ごとの気象データを作成するため、自記記録紙までさかのぼった。それによって作成されたのが、東京の1960年代、1970年代、1980年代である。1991年以降は、気象庁よりSDP気象データとして、毎時の気象データが公開されるようになり、整備が容易になった。なお、本書ではできる限り生データを尊重する意味で、SDPデータ のうち、日射量を観測している全国67地点を整備した。これらのデータは、熱負荷計算以外にも太陽熱利用、風力発電等、種々のシミュレーションに利用可能である。今後、新たに、逐次気象データを追加していく予定である。
 昼光データは、東京都郊外の調布市にある建設会社の技術研究所で、1993〜2002年までの観測データをまとめ、昼光標準年気象データとして提案するものである。長期の昼光観測データは他に類がなく貴重なものと思われる。昼光の応用例として、フリーウェアのRadianceの利用方法を記述した。
 本書のソフトウェアおよび気象データが、広く利用されることを望むものである。
                   平成17年1月 武田 仁
                   (本書3ページより抜粋)
                 
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