生命の多様性の表現分子、エスケープ装置
遺伝子にコードされたタンパク質は完全なコピー分子が作られます。 糖タンパク質では、タンパク質の同じ位置に色々な構造の糖鎖が結合しています。 これを糖鎖のミクロ不均一性と言います。 バリアーの厚みを増し、機械的な強度を上げたり、単一の破壊活動によって全滅しないエスケープ機能をもたらしていると考えられます。 |
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ウイルスの感染
この破壊活動の典型例がウイルスの感染です。 ウイルスは糖鎖バリアーの末端にあるシアル酸に結合するタンパク質(ヘマグルチニン)とそのシアル酸を加水分解するシアリダーゼを持っています。 バリアーに結合した後、邪魔物を排除し、宿主の細胞に遺伝子を送り込む様は、特殊部隊さながらです。 |
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バイオシグナルの受容体の誕生
ウイルスの感染には、たんなる破壊活動ではない一面もあります。 ウイルスは自己複製のため宿主の生合成系を使い、ヘマグルチニンとシアリダーゼを宿主の細胞上に準備します。 この細胞が生き残れば同種の細胞と特異的に結合する能力を手に入れたことになります。 |
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人体でバイオシグナルとして働く糖鎖
人体内で炎症がおこると、L-セレクチンやE-セレクチンといった糖鎖結合性のタンパク質が血管内皮細胞上にエキソサイトーシスにより出てきます。 セレクチンはシアリルルイスX(SLeX)という糖鎖に結合します。 シアリルルイスX(SLeX)は単球や好中球に発現されていて、他の赤血球などには発現されていません。 すぐに役立つ貪食細胞を炎症部位に向かわせ、野次馬は整理する役目を果たしています。 |
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生物進化の加速装置
糖鎖は遺伝子に起こった小さな変化を、細胞上に大きな変化として写し出すモニターであると考えられます。。 その変化が、致命的であればネクローシス(炎症を伴う激しい死)かアポトーシス(食細胞によって穏やかに除かれる)によって排除される。 増殖を制御するブレーキの故障を引き起こせば、腫瘍の発生となります。 実際、腫瘍細胞の表面には正常細胞とは異なる糖鎖が多数発現されています。 種の存続にとって有利な性質が発生すれば、進化と呼ばれることになります。 糖鎖の変化が新たなウイルスの受容体となれば、新たな遺伝情報を受け取ることになります。 |
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これで終わりです。お疲れさまでした。
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