濾胞型ヘルパーT細胞と抗体のクラススイッチの謎

これまで、我々はTh2を中心としたIL-4発現制御過程について解析してきましたが、じつはこのサイトカインは抗体のクラススイッチには欠かせないサイトカインなのです。抗体はB細胞から最終分化したプラズマ細胞から産生され、外来性微生物に対する生体の獲得性免疫において強力な生体防御反応を担う可溶性因子としてよく知られています。
このように、有効な生体防御が行われるにはIgMからIgGやIgAクラスにスイッチした抗体が必要となるわけです。B細胞がクラススイッチを起こすためには、T細胞の存在が必要とされます。このT細胞に依存する免疫応答に必要なT細胞として、2次リンパ組織に分布してエフェクターとして働くサイトカインを産生する濾胞型ヘルパーT細胞(TFH)の存在が近年になって分かってきました。このTFHと言うT細胞は、Th2同様IL-4を産生するだけでなく、IL-21を産生することでB細胞にクラススイッチを起こさせ、増殖を誘導してプラズマ細胞への分化・増殖を制御しているのです。しかしながら、TFHの特性やその役割、B細胞がIgGへクラススイッチし てプラズマ細胞に分化する場との関係、クラススイッチや後期B細胞分化を誘導するT- B細胞間相互作用の分子機構、各クラスの抗体産生を誘導するメモリーB細胞の生存・維持の場など、数多くの疑問が残されています。そこで、われわれはこれら疑問に答えるべく遺伝子工学的な手法とイメージングを組み合わせることにより、抗体が作られる過程をモニターできる新たなシステムを構築することにチャレンジをしていきたいと思います。
最近、我々は上記のCNS-2と呼ばれるIL-4遺伝子座の制御領域が、TFHにおけるIL-4産生を決める重要なゲノム領域であることを発見しました。この発見により従来考えられていた抗体産生に関わるT細胞の概念が変わろうとしています(Immnity,2012,)。





 

 

 
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