MD/FEPを用いた
大腸菌トリプトファンリプレッサーの 構造と機能の研究


大腸菌トリプトファンリプレッサーとは?

大腸菌トリプトファンリプレッサーは108アミノ酸からなり、 二量体(分子量25,000)を形成するDNA結合タンパク質です。 このタンパク質はトリプトファン2分子を結合し、 コンフォメーション変化を起こしてオペレーターDNAに特異的に結合します。 その結果、芳香族アミノ酸の生合成を制御します。

各サブユニットはAからFの6つのヘリックスを含み、DからEの部分で DNA結合部位であるhelix-turn-helixの超二次構造を持っています。 このタンパク質は分子量が小さく、 アポ型、ホロ型、 DNAとの複合体の X線結晶構造 が既に解明されている為、 コンピュータシミュレーションには格好の研究対象であります。

更に詳しく知りたい場合... SCOP:TrpRのページ

MD/FEPって何?

MDとは分子動力学法(Molecular Dynamics)の事です。 ある分子を構成している原子それぞれについて、 位置と速度を計算し、分子の動きをシミュレートする方法です。
  Komeiji et al., Proteins 20, 248-258 (1994)

FEPとは自由エネルギー摂動法(Free Energy Perturbation)の事です。 MDとFEPを組み合わせると、野生型と変異型のタンパク質の構造と機能の 違いを予測できるのです。つまり、 わざわざ実験しなくても タンパク質をデザインすることが可能になるのです。

実際の計算はどうしてるの?

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トリプトファンリプレッサーとDNAの複合体の 置換を行いたい部位を中心に およそ15オングストロームの原子だけを 動かしています。それを覆うように25オングストロームの 球状の水を発生させると...

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このようになります。 大体、このような条件で計算を行っております。

今までどんなことが判ったの?

タンパク質−リガンド相互作用の分子設計

トリプトファンリプレッサーとトリプトファンとの結合について、 分子設計を行いました。 トリプトファン類似体である5-methoxy-tryptophanに特異的に結合する 変異型トリプトファンリプレッサーの分子設計を行いました。 実験も行い、実験値と計算による予測値がほぼ一致することを確認しました。 これによって、計算機シミュレーションがドラッグデザインにきわめて 有効であることを示すことが出来たと考えています。
  Komeiji et al., Prot. Engng. 7, 1239-1247 (1994)
  Honda et al., Proteins 26, 459-464 (1996)

タンパク質−タンパク質相互作用の分子設計

トリプトファンリプレッサーの熱安定性に関して、 分子設計を行いました。 野生型より熱に安定な変異トリプトファンリプレッサーと、 不安定な変異トリプトファンリプレッサーの 分子設計を行いました。 実験値と計算による予測値は定性的には符号しておりました。 現在、自由エネルギー変化でどれくらい安定化したのか、不安定化したのかを 定量的に確認する為、熱測定を行っております。

タンパク質−DNA相互作用の分子設計

トリプトファンリプレッサーとオペレーターDNAとの結合について、 分子設計を現在行っています。

修士論文要旨があります。

これからのこと

このような分子設計のための分子動力学シミュレーション ・自由エネルギー計算の手法をさらに精密化して、いろいろな タンパク質の分子設計に利用しようと考えています。

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