「微生物学」質問と解答コーナー

Start; 97/07/15: Last update; 97/08/08

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院内感染MRSAについて、グラム陽性菌の細菌ということは分かったのですが、 具体的にはどういう作用をするものなのでしょうか。(97.07.14)

 Staphylococcus aureus の病原性について詳しいわけではありませんが、 一般に外毒素(エンテロトキシン)による食中毒を起こすとされていると思います。 菌が増殖してしまった不適切に貯蔵された食物の摂取に起因します。菌の増殖により 毒素が生産され、それを摂取することにより、腹痛、悪心、嘔吐が起こります。 毒素は耐熱性です。4℃以下に保存することにより、菌の増殖・毒素の生産は抑えられます。
 S. aureus は普通の場所、例えば人の皮膚や上気道にも存在します。ですからその 排除はほとんど不可能で、常に人はそれらの菌に曝されているわけです。ところが、 健康な人は、それらに対する充分な免疫力を持ちます。お年寄りや病人の場合に(病院で)、 その感染に対する防御機能が充分に働かず、病気になってしまうのです。
 一般の細菌は抗生物質などに非常に感受性で、短期間の投与で完全に菌を駆逐できます。ところが、 最近抗生物質の投与のし過ぎによるとされるのですが、薬剤耐性菌が拡がっています。それは薬剤耐性 因子(プラスミド)によります。MRSA はメシチリン(M)耐性(R)(S)taphylococcus (a)uresus の略で、 いろんな抗生物質に耐性を持つのでなかなか薬で駆逐できません。MRSA にも効く抗生物質として バンコマイシン(?)が知られていますが、それに対する耐性菌が最近報告され新聞を賑わせています。
 「具体的にはどういう作用をする」とはどういう趣旨の質問なのかはっきりとしませんが、上記の説明で 満足いただけるでしょうか?質問に対する答えとして的が外れている場合など、質問がありましたら、 再度どうぞメールまたは面会においで下さい。
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山登研のホームページを見ると、醤油の着色のことが書いてあります。最近、透明な醤油が発売されていますが、 それは同じような原理で作られたものなのでしょうか?(97.07.22)

 透明な醤油を私は知りませんでした。そこで、共同研究させていただいているキッコーマン 中央研究所の阿部敬悦博士にお尋ねしました。
 透明な醤油の製造法は原理的に全く違い、本醸造ではないとのことです。醤油のフレーバー(香り)成分には500種以上の 化学物質が知られています。それらを抽出して、簡単にいえば塩水(もちろん塩以外にも鉄分などの成分を加えますが)に、 それらフレーバー成分を加えて、香りだけ醤油に近いものにしたものだそうです。
 着色を嫌う加工食品に用いられているそうです。
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ペントースを無くして発酵させると上記のように透明な醤油になるのでしょうか?(97.07.22)

 発酵に際し、ペントースを無くしブドウ糖だけにしたきれいな飼料(培地)を使うことは実験的には可能です。 そのようにして作った醤油は、透明ではありませんが着色が少なく、時間が経っても黒くなりにくいそうです(実験で示されています)。
 しかし、そのようなきれいな飼料(培地)は大変高くつきます。すると我々が購入する醤油も、大変高いものになります。 それ程までして消費者は色の着かない醤油を買いますか?
 そこで一番妥当な方法として考えられるのが、遺伝子工学を用いた育種です。そのために代謝制御系を明らかにするのです。
 ただし、着色の原因のアミノカルボニール反応はヘキソースでも進行します(ヘキソースでは熱すると反応し、常温では 大変ゆっくり反応します。ペントースでは常温でも反応が進行するため実際の醤油で問題になってきます)。ですから完全に その反応を抑えることは不可能です。
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山登研ホームページに、ATPaseの頭部部分の回転によるエネルギー共役のことが載っています。鞭毛モーターの回転も ATPaseの場合のように、ATPの加水分解に伴った回転なのでしょうか?(97.07.22)

 筋肉のアクトミオシン系と鞭毛モーターの部分のホームページをまだ準備できていないので申し訳ありません。
 世界最小のモーターとして、昔は鞭毛モーターだけが知られていました。鞭毛モーターは、膜の内外のイオン(プロトンや ナトリウムイオン)の濃度勾配(厳密には電気化学ポテンシャル)を駆動力とします。イオンが流れ込もうとする力を利用して、 イオンの流れに共役してモーター部分が回転します(水車のようなものですね)。分子レベルでどの様になっているのか、 まだわかりません。そのため研究が盛んです。モータータンパク質遺伝子が最近やっととられて、アミノ酸配列がわかったところです。 チャンネルタンパク質との類似性が問題となっています。但し、ATPase活性はありません。
 そのような時に、H+輸送性F型ATPaseの頭部部分のATP依存の回転が顕微鏡下で実際に観察されました。ATPaseでは、ATPの 加水分解とイオンの流れの共役は、タンパク質のコンフォメーション変化によると考えられていました。しかし、その共役が、 ATPaseの頭部部分では、6個(2種)のサブユニットによる軸(3番目のサブユニット)の回転であることが、1997年になって はじめて示されたのです。今度はその軸の回転が、膜部分での未知の機構によってイオンの流れに共役するのです。今その膜部分の 反応機構の研究が盛んです。そして当然予想としては、鞭毛モーターも似たような機構で回転していると考えられます(単に山登の 推測です)。鞭毛モーターの研究者も、ATPaseの研究状況にも注意を払うようになっています。たぶん同じような分子機構で 働いているのではないでしょうか?その辺を明らかにするために、私達は腸内連鎖球菌のV型ATPaseの研究をしています。
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納豆を煮ると納豆菌は死滅しますか。(2011.10.18)

 納豆菌はBacillus subtilis(枯草菌)の一種で、亜種としてnattoとされています。 名は体を表すで、稲わらのような枯れ草にいます。煮た大豆を菰に包んで保温すると納豆ができます。 わらについていた納豆菌が大豆を栄養にして増殖し、発酵したからです。
 枯れ草などにいるのはその胞子です。水分と栄養があれば、その胞子(芽胞)から菌が増殖を始めます。 増殖状態の菌は熱や乾燥に弱いのですが、逆に乾燥や栄養飢餓状態になると胞子を作り休止状態に なります。胞子は熱にも乾燥にも耐性です。納豆菌として乾燥状態で売られているのはこの胞子です。
 以上からお分かりのように、大豆上で増殖して納豆を作っている菌は基本的には栄養増殖状態の 熱に弱い菌体です。でも、胞子などもいくらか混ざっているでしょうから、胞子状態で残っている その少しの納豆菌は死滅しません。(山登はそれ程詳しくないので、納豆に存在する納豆菌の何パーセント くらいが胞子状態のままか、データを持っていません。)

納豆の中で増殖している納豆菌はどの程度の温度で死滅しますか。(2011.10.18)

 栄養増殖中の納豆菌は熱に感受性で、普通の煮沸殺菌法(100℃数分、60-65℃15分、55-60℃30分 くらい)で十分だと思います。一方胞子状態になった菌は、熱耐性なため、100℃で長く煮沸しても 死にません。その後水中で栄養があれば、増殖を始めます。増殖状態になれば熱感受性に なりますので、普通の殺菌法が有効です。それでも死なない胞子状態のままで残っていたり するので、こうした殺菌法を数回繰り返すと、完全に殺菌できます。(これを 見出したのがTyndallで、間歇滅菌法と呼ばれます。)
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