「基礎生物工学演習」の過去問集

(「微生物学」の過去問集のページの序文をお読みいただきたいと思います。 一期生は演習をしませんでした。1989年度から1994年度までは,山登が後期に 一部微生物学(約3ー4回)をやり,残りを基礎生物工学演習に当てて, 同じコマでテストをしました。ですから,ここの問題と,「微生物学」の その年度の後期の問題を,同じ時間にまとめてやっていただき,点数を全体で まとめてつけていました。1995年度からは,正式に「基礎生物工学演習」として 認められ,全研究室(助手の先生にかなりお願いしています)で分担して担当し、 生物工学科の助手の先生全員に問題をお願いしています。ここの過去問(1995以降) は何人かの助手の先生にご協力いただいて問題を掲載させていただいております。)
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1989
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    大腸菌 DNA を pBR322 の EcoRI 部位にクローニングする。次の問題に答えよ。 但し,EcoRI 制限酵素1 unit は,λファージ DNA 1μg を,0.1M Tris・HCl, pH7.5,7mM MgCl2,50mM NaCl 中,37℃,1時間で完全に切断する 活性として定義される。λファージ DNA は 50 kbp あり、EcoRI 部位は5カ所ある。
  1. DNA 中の 1 bp 当りの平均の分子量を求めよ。ただし dAMP, dCMP, dTTP, dGTP の 分子量はそれぞれ 331, 307, 322, 347 である。また原子量は O:16, H:1 である。
  2. 大腸菌 5 x 109細胞/ml, 5ml より DNA を調製したところ,3 OD単位 (OD単位=OD260 x 1ml)あった。 1 OD単位が 50μg DNA に相当するとして,大腸菌 1細胞当りの DNA 量は何 pg か。また何 kbp か。ただし DNA の回収率は 100% とする。
  3. EcoRI 制限酵素は 6 塩基認識制限酵素である(塩基配列 GAATTC を認識して切断する)。 平均何 bp に 1 個の EcoRI 部位があるか。
  4. 大腸菌 1 クロモゾーム当り何個の EcoRI 部位があるか。
  5. 大腸菌 DNA を pBR322 の EcoRI 部位にクローニングするのに,10 μg の大腸菌 DNA を EcoRI 処理したい。必要最少量の 10 倍量の EcoRI を加えるとして,何 unitの EcoRI が 必要か。反応は,37 ℃, 12 時間行うことにする。
1990
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    大腸菌のプラスミド pBR322 に外来の DNA をクローニングした。その際の各ステップにおける 計算等について,次の問題に答えよ。
  1. dCTP の構造式は以下のものである(省略)。分子量を求めよ。C=12, N=14, H=1, O=16 とする。
  2. pBR322 は 4361 bp よりなる。ヌクレオチドの平均分子量を 330 とした場合, 分子量はいくらと計算されるか。
  3. pBR322 は大腸菌 1 細胞あたり 2000 コピー程度まで増幅可能である。 6 x 108/ml の 大腸菌( pBR322 を持つ)の培養液 500ml から pBR322 DNA を調製した。回収率を 100% と して、何μg の DNA がとれるか。
  4. pBR322 は制限酵素 BamHI により一箇所切断される。 BamHI 酵素活性は、 50mM Tris-HCl, 10mM MgSO4, 5mM DTT(ジチオスレイトール)中、 37 ℃でλファージ DNA 1 μg を切断する活性を 1 unit と定義されている。λファージ DNA は 50 kbp であり、BamHI により 4 箇所切断される。 pBR322 DNA 10μg を完全に切断するに 要する BamHI の最低必要量は何 unit か。
  5. クローニングした後のプラスミドの制限酵素地図を作製したい。各種制限酵素 (BamHI, EcoRI, PstI)で切断した後に、アガロースゲル電気泳動を行い、次の図のような 結果(省略)を得た。制限酵素地図を作製せよ(例のように、制限酵素の切断部位の配置とそれぞれの大きさを 求めること)。分子量マーカーとしては、λファージ DNA の HindIII 切断断片を用いた (大きい方から、23.1, 9.42, 6.56, 4.36, 2.32, 2.03, 0.56, 0.13 kbp である)。ただし pBR322 の切断部位は例に与えられたものである。
1991
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    クローニングした遺伝子を効率よく発現するためのプラスミドベクターを作製する過程について、以下の各問に答えよ。
  1. まずプラスミド(pBR322 系)を大量にとるため、プラスミド保有大腸菌を 1 リットルの培地で 生育させた。菌数が 2 x 107/ml になるように植え継ぎ、定常期(5 x 109/ml) になるまで生育させた。一定速度で生育するものとして、最低何時間の培養が必要か。世代時間は 0.5 時間とする。
  2. 定常期では、プラスミドは 200 コピー/菌体まで増幅されるとする。 DNA 中のヌクレオチドの 平均分子量を310とし、このプラスミドが 4.0 kbp の大きさであるとしたとき、プラスミドは何μg とれるか。ただし回収率を 100% とする。またそれは何 mole か。
  3. このプラスミドに 8mer の XhoI リンカー( 8 bp の DNA の中に制限酵素 XhoI の認識部位をもつように合成したもの)を組み込みたい。 0.025 OD260ユニットを購入した。 何 pmole あるか。 1 OD260ユニットは、OD260 x ml により定義され、50μg DNA に 相当する。
  4. pH9.0 の 0.1M トリス塩酸緩衝液 100ml を作製する。トリスの構造式は、H2NC(CH2OH)3であり、 pKa = 8.1 である。何g のトリスを秤量し、濃塩酸 (37%;比重 1.03)を何ml 加えて 100ml とするとよいか。ただし、C=12, N=14, H=1, O=16, Cl=35.5 とする。
  5. まず 1μg のプラスミドを、一ケ所で切断する制限酵素 SmaI で切断し、Bacterial alkaline phosphatase処理により 5' 端の燐酸基を除去して、自分自身で再結合してしまうことを防ぐ。 alkaline phosphataseを何ユニット用いればよいか。1ユニットは、37 ℃、pH9.0 の 0.1M トリス塩酸緩衝液 1ml 中で 1pmole の燐酸を 1 時間に遊離させる酵素量として定義する。反応は、 同じ条件で 1 時間行うものとし、必要最小限の 10 倍の酵素量を加えることにする。
  6. プラスミドに、5' 端を燐酸化したリンカーを DNA リガーゼで結合させる。1μg のプラスミドに 対し、プラスミドの分子数の 100 倍のリンカーを反応させる。何OD260ユニットのリンカーを用いれ ばよいか。
1992
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    大腸菌トリプトファンリプレッサー(TrpR;分子量 12,000 のポリペプチドの2量体であり、 それぞれモノマーに一つずつ独立のトリプトファン結合部位を持つ)の構造と機能の研究をしている。 以下の各問に答えよ。
  1. まずリプレッサータンパク質を大量にとるため、trpR 遺伝子を持つプラスミド保有大腸菌を 1 リットルの培地で生育させた。菌数が 107/ml になるように植え継ぎ、 対数増殖期 (1 x 109/ml)になるまで生育させた。一定速度で生育するものとして、 何時間の培養が必要か。世代時間は 0.7 時間とする。
  2. TrpR は 100,000 ポリペプチド(TrpR 分子としては 50,000)/菌体まで 生産されるとする。この 1 リットル培養で何分子の TrpR 分子が生産されるか。又それは、 何mg か。
  3. TrpR の 1 ポリペプチドにつき、芳香族アミノ酸(Trp, Tyr, Phe)がそれぞれ 2, 2, 1 個ずつ存在する。これらのアミノ酸のモル吸光係数ε279 をそれぞれ Trp, Tyr, Phe の順に 5.2 x 103, 1.1 x 103, 1 x 101 とすると、TrpR 分子のモル吸光係数ε279 はいくらと計算されるか。
  4. 1 リットル培養の菌体を回収して、細胞を破壊後、粗抽出液から TrpR を硫安分画や カラムクロマトグラフィーで精製した。精製標品 3ml の吸光度を測定したところ、A279 が 0.34 あった。回収率は何% か。
  5. この精製標品を用いて、トリプトファンの結合を解析する。ミクロ平衡透析装置の一方に 0.48mg/ml の TrpR 溶液 100μl を入れ、透析膜をはさんだもう一方の方に14C で標識したトリプトファン (100MBq/mmol) をいれて平衡化させた後、両チェンバーから サンプリングしてその放射活性を測定したところ、タンパク質側が 18,900dpm/50μl, もう一方の側が 15,600dpm/50μl であった。
     
    1.基質側のトリプトファン濃度は何μM か。  
    2.トリプトファン結合活性はいくらか(何nmol/mg protein)。  
    3.この基質結合の解離定数を 40μM とすると、結合の最大量はいくらと計算されるか (何nmol/mg protein)。  
    4.用いた TrpR のうち、何% が結合活性を持っていたことになるか。
1993
[1989] [1990] [1991] [1992] [1993] [1994] [1995] [1996] [1997]
    マウス3T3 細胞からゲノム DNA のバンクを作製する。以下の問に答えよ。
  1. 細胞を血清培地のプレートにて培養する。はじめに 104細胞/プレートでまいて、 105/プレートで細胞を集める。世代時間 24 時間とすると、何日の培養が必要か。
  2. 1.00 OD260単位(OD260nm x ml) の二本鎖 DNA は 50μg に相当する。 細胞 50g から DNA を調製し、0.2ml の水に溶解した。この溶液から 10μl とり、 水で希釈して 5.0ml にし、その 260nm の吸光度を分光光度計で測定したところ、 0.014 あった。得られた DNA 溶液の濃度はいくらか。また調製の際の収率を 50% とすると、 細胞 50g 中に存在する DNA の量はいくらと計算されるか。本細胞の DNA は約 109 塩基対で、塩基の平均分子量を 330 としたとき、この DNA の分子量はいくらか。
  3. 得られた DNA を4塩基認識の制限酵素 Sau3AIで部分分解して、約 50 kb の断片を得る。 しかし、もし完全分解するとすると、分解産物の平均塩基対数はいくらか。
  4. これらの DNA 組換え反応において用いる緩衝液は、大抵 Tris-HCl であり、 普通pH7.6 のものを用いる。0.1M Tris-HCl 緩衝液 100ml の作製法を述べよ。 Tris の化学式は C4H11O3N1, C=12, H=1, O=16, N=14, Cl=35.5 であり、濃塩酸は、37.7%(W/W)、 比重 1.13 である。また Tris のpKa = 8.1 とする。
  5. 得られた部分分解 DNA をコスミドベクター pHC79 にクローニングしてバンクを作製する。 ベクター 2μg とligation反応に用いる DNA は何μg が適当か。ベクターの鎖長は 7.5 kb であり、 またligation反応では、普通、挿入 DNA をベクターの約 2 倍の分子数加えて反応させる。
1994
[1989] [1990] [1991] [1992] [1993] [1994] [1995] [1996] [1997]
    大腸菌において、組換え DNA を用いて、アルコール脱水素酵素(ADH;分子量 63,000)を生産し精製する。その過程について以下の問に答えよ。
  1. 本酵素遺伝子を持つプラスミドで形質転換した大腸菌を 10 リットル培養する。はじめに 2 x 109/ml の菌液 10ml を 10 リットル培地に植え継ぎ、7 時間 37 ℃に て振とう培養し、6 x 108/ml の対数増殖期後期になったところで集菌した。 本菌のこの培地での世代時間を 45 分とすると、誘導期はどの程度と計算されるか。
  2. 10 リットル培養の大腸菌の湿重量は約 25g である。さらにその約 5 分の 1 が菌体の タンパク質重量に当たる。また菌体タンパク質の 5 分の 1 が膜タンパク質であり、残りが細胞質 の可溶性タンパク質である。本 ADH は大腸菌可溶性タンパク質の 10 分の 1 まで産生される。 この 10 リットル培養から何mg の ADH が産生されたと期待されるか。 また、菌体当たり何分子の ADH が産生されたことになるか。
  3. 可溶性画分をとり、各種カラムクロマトグラフィーにて精製する。その時、30mM 酢酸 ナトリウム緩衝液、pH5.0 を用いる。10 リットルの本緩衝液の作り方を述べよ。但し、 酢酸のpKa = 4.77, C=12, H=1, O=16, Na=23 である。
  4. 本酵素反応ではエタノールを基質として酸化しアセトアルデヒドを生産する。その酸化 還元反応において NAD+ から NADH を生じる。酵素の 1 ユニットを、ある反応条件 (0.1M Tris-HCl 緩衝液、pH8.0 中、37 ℃)において 1μmol の NADH を 1 分間に生じる量として定義する。精製本酵素が 1,500 ユニット/mg タンパク質の比活性を 持っていたとき、本酵素のターンオーバー数はいくらと計算されるか。
  5. この 10 リットル培養の菌体からの精製標品として、総活性 55,000 ユニット得られた。精製過程での回収率を計算せよ。
1995
[1989] [1990] [1991] [1992] [1993] [1994] [1995] [1996] [1997]
7問中4問解答。(1,2,3より2問。4,5,6,7より2問。)
2.(1)次の文中の( )に適切な語、数字、記号、式を入れよ。
 酸とは、(イ)を失う傾向にある化合物のことである。強酸の水溶液では、 酸はほぼ完全に解離し(イ)と(ロ)に分かれているが、弱酸の場合は、 一定の割合で解離が起こる。ある弱酸HAの水溶液ではHA、H+、A-の 活量の間に(ハ)が成立し、(ニ)をKaとおくとKa=(ホ)×(ヘ)/(ト) の式が成り立つ。これを変形して得られるHenderson-Hasselbalch 式(チ)に よって、水溶液のpHを求めることが出来る。弱酸の水溶液の緩衝作用が最も高いpHは、 (リ)付近である。この式では、活量の代わりにモル濃度を便宜上用いており、 (ヌ)や(ル)の影響を無視しているため、計算で求められたpHと実際の溶液のpHに 違いが出ることがある。
  (2)pH5.1の 0.2M 酢酸緩衝液 3 リットルの作製法を示せ。 1M の酢酸溶液と 酢酸ナトリウム・三水和物(分子量136)がいくら必要か。酢酸のpKaは4.76とする。

4.カタラーゼの分子活性(ターンオーバ数)を決定する実験で次のデータが得られた。
 酵素標本は純度85%で、濃度は1リットルあたり乾燥重量2.95mgである.この標本 0.1ml は過剰の過酸化水素と反応し、10 分間に 340μl(標準状態)の酸素を発生することが 検圧法で確認された。カタラーゼの分子量 225,000 とされている.
 これらのデータを用いて、カタラーゼの分子活性を計算せよ(カタラーゼ標本のα活性から β活性への転移は無視し、酸素発生の速度は一様であると仮定せよ)。

7.10 キロ塩基対の 2 本鎖環状プラスミド ST(アンピシリン耐性遺伝子を保有)がある。  その 2.5μg 中の分子数は、1 塩基長のモノヌクレオチドの平均分子量を 300、 アボガドロ数を 6.0×1023 としたとき、◯.□×10( )個である。
 また、200μl の滅菌水に 80ng のプラスミド ST が溶けている水溶液から 5μl 取り出し、 大腸菌のコンピテント細胞に導入した。その後、アンピシリンを含む寒天プレートに塗り広げて 生えてきたコロニー数は 25000 個だった。プラスミド ST 1個あたりの形質転換効率は、 『◇.▽・×10( )/プラスミド ST 1個』と表現できる。
 さらに、プラスミド ST を 84% の収量で形質転換細胞の培養液から抽出・純化し、 300μl の水溶液として調製した。そのうち 5μl を取り出し、695μl の滅菌水に入れて 混合したものをキュベットに入れ、分光光度計を用いて 260nm での吸光度を測定したところ 0.2 OD(光学密度)だった。このことから、本来理論的にはこの形質転換細胞からプラスミド ST を ☆.・mg 回収できたことになる。ただし、2本鎖DNAにおいて 1 OD=50μg/mlとして計算せよ。
   以上、3つの設問に導出過程を含めて解答しなさい。
1996
[1989] [1990] [1991] [1992] [1993] [1994] [1995] [1996] [1997]
7問中3問解答。(1,2より1問。3,4,5,6,7より2問。)
1.@ 15℃でエタノール 15.0 cm3 と水 85.0 cm3 とを混合して エタノール水溶液をつくった。この水溶液の (i)重量パーセント濃度 (w/w %) と (ii)モル濃度 (mol/dm3) を計算せよ。ただし、エタノール(分子量 46.07)、水およびこの水溶 液の密度は 15℃でそれぞれ 0.7947, 0.9991, 0.9867 g/cm3であり、混合後の体 積は混合前の体積の和に等しくないことに注意せよ。
   A下記のサリチル酸のアセチル化反応(図省略)において、サリチル酸 200 g と無水酢酸 50 g を反応させた場合、どちらが何 g 残るか。また、生成するアスピリンは何 g か。反応は 完全に進行するものとして計算し、原子量は以下の数値を用いること。H=1, C=12, O=16

2.培養細胞を洗浄するために用いる生理的食塩水を調製したい。生理的食塩水は細胞の 浸透圧と等張になるように塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの塩類を含み、緩衝液で pH を 中性に保つようになっている。
 Dulbecco の PBS(-)(phosphate buffered saline (-)) は pH 7.3 で浸透圧 279 mOs/kg になる ように 137mM 塩化ナトリウムと 2.7mM 塩化カリウムを含み、リン酸1水素ナトリウムと リン酸2水素カリウムからなる 10mM のリン酸緩衝液となっている。Dulbecco の PBS(-) を 1リットル調製するにはそれぞれを何グラムずつを溶かして1リットルにすればよいか?
 それぞれの分子量を NaCl, 58.44; KCl, 74.56; Na2HPO4, 142.14; KH2PO4, 136.09 とし、リン酸の pKa2は 7.20 とする。

3.大腸菌の DNA(染色体)の分子量は 2.2×109である。デオキシヌクレオチド残基 の相補対の平均分子量を 618、1相補対あたりの DNA のらせん軸方向の長さを 3.4Å、アミノ酸の 平均分子量を 120 として以下の問に答えよ。
(1)この DNA の長さを求めよ。
(2)大腸菌染色体のうちもし 75% が特定のタンパク質に対する暗号だとすると MW60000 のタンパク質を何種類作ることができるか計算せよ。

4.RNAポリメラーゼは、鋳型となる DNA の存在下で、ATP, UTP, GTP, CTP のヌクレオチド三リン酸からの RNAの合成を触媒する。この反応を調べるために次のような実験を行なった。
 100nM の ATP, GTP, CTP, 14C-UTP と RNA ポリメラーゼと DNA を混ぜ全量 0.25ml とした。 10 分間 37℃に保温した後、トリクロロ酢酸を終濃度 5%となるように加え、遠心分離し、沈殿物の 放射活性を測定した。また、反応系に臭化エチジウムを終濃度 10-6M となるように加え 同様に反応させた。それらの結果を、下に示した。臭化エチジウムの RNA 合成に対する影響について述べよ。

DNAの量 補正済み放射能(cpm)
(μg/0.25ml) 薬剤なし 薬剤あり
1 481 353
1.4 614 469
2 775 613
3 976 824
5 1249 1024
10 1528 1310
20 1750 1663

6.ある細胞の増殖曲線を作成するためにチミジン([3H]-TdR)取り込み測定法を用いた。 細胞を付着させて培養を開始し、そこから経時的にチミジンの取り込み量(cpm)を測定した。その結果 以下に示すような結果が得られた(培養開始後;カウント数(cpm))(12時間;500cpm)、 (36時間;1280cpm)、(60時間;3277cpm)、(84時間;8384cpm)、(108時間;21452cpm)。
(1)倍加時間は何時間か(整数で)。この値を用いて(2)、(3)に答えよ。
(2)培養開始 12 時間後における細胞数が 2x105個だったとする。培養開始 66 時間後 における細胞数はいくらか。
(3)今回の実験では月曜日の午前8時に培養が開始されたとすると、9x106個の細胞が得られるのは 何曜日の何時頃か。log2=0.30、log3=0.48、log5=0.70とする。

7.(1)aキロ塩基対の2本鎖環状プラスミドDNA(アンピシリン耐性遺伝子を保有)の bμg 中の分子数を求めよ。
 ただし、1塩基長のモノヌクレオチドの平均分子量をc、アボガドロ数をdとする。  □×10( )個 の形で答えなさい。
 (2)また、1μl あたり eng の濃度のプラスミドDNA水溶液 100μl から 10μl 取り出し、 大腸菌のコンピテント細胞に導入した。
 その後アンピシリンを含む寒天プレートに塗り広げて生えてきたコロニー数は 5000個だった。 プラスミド分子1個あたりの形質転換効率は、『◇×10( )/プラスミド分子1個』 と表現できる。
 (3)さらに、プラスミドDNAを 80%の収率で形質転換細胞の培養液から抽出・純化し、 400μl の水溶液として調製した。そのうち 15μl を取り出し、735μl の滅菌水に入れて混合 したものをキュベットに入れ、分光光度計を用いて 260nm での吸光度を測定したところ 0.4 OD(光学密度) だった。このことから、本来理論的にはこの形質転換細胞からプラスミドDNAを何 mg 回収できたことに なるか。ただし、2本鎖DNAにおいて 1 OD = 50μg/ml として計算せよ。
   以上、3つの設問に導出過程を含めて解答しなさい。
1997
[1989] [1990] [1991] [1992] [1993] [1994] [1995] [1996] [1997]
7問中3問解答。(1,2より1問。3,4,5,6,7より2問。)
1.密度1.152g/cm3, 重量パーセント濃度22.0%(w/w)の硫酸水溶液 (aq. H2SO4)がある。
i) 重量パーセント濃度10.0%の硫酸水溶液500gを調整するには、22.0%硫酸と水を何グラム ずつ混合すればよいか計算せよ。
ii) 22.0%硫酸水溶液の規定度を求めよ。但し、硫酸の分子量は98.01である。

  下記のように(図省略)、ナトリウムフェノキシド24gとジメチル硫酸26gを反応させたところ、 アニソール18gが得られた。このとき、この反応の収率は何パーセントとなるか計算せよ。但し、原 子量は以下の数値を用いよ。C=12,H=1,O=16,Na=23,S=32

2.以下の文章はリン酸緩衝液の調製法を述べたものです。(ア)〜(コ)にあてはまる 数値を答えなさい。リン酸の pKa2 は 7.20 とする。

pH7.3 の 20mM リン酸ナトリウム緩衝液を5リットル 調整するには、

3.図1は大腸菌のプラスミドpBR322の物理地図である。それぞれの 制限酵素の切断点を起点(図の上側)からの塩基数で示している。 以下の問に答えよ。 なお、デオキシヌクレオチド残基の相補対の平均分子量は618、 アミノ酸の平均分子量は120として計算すること。 また、必要に応じて図2を参照すること。
1)図1のプラスミドの分子量はいくつか。
2)図1のプラスミドを制限酵素NdeIとMroIで切断した場合に 生じる断片のうち小さい方の断片の長さを求めよ。また大腸菌の 体長を2.0μmとすると小さい方の断片の長さは大腸菌体長の何倍か。
3)問2)の小さい方の断片には何個のアミノ酸のコードがあるか求めよ。 またタンパク質の平均分子量を5500とすると小さい方の 断片には何個のタンパク質がコードされうるか。

4. 肝臓からの抽出液(タンパク濃度、32mg/ml)10μlは、至適活性測定条件下で、 0.14μmol/minの速度で反応を触媒した。この抽出液50mlを硫酸アンモニウム沈殿で分画し、 20〜40%飽和で沈殿する分画を10mlに溶かすと、この溶液のタンパク濃度は50mg/mlであった。 この精製分画10μlは0.65μmol/minの速度で反応を触媒した。
(a) 精製画分中の酵素の回収率およびこの分画法で得られた精製度を求めよ。

この酵素はMichaelis-Menten 式に従って反応を触媒する。ある量の酵素を使って,阻害剤無しの場合 と10mMの阻害剤を加えた場合に反応速度を測定すると下記の表のようになった。

基質濃度(mM) 反応速度(阻害剤無し)μmol/min 反応速度(阻害剤有り)μmol/min
1 2.5 1.17
2 4.0 2.1
5 6.3 4.0
10 7.6 5.7
20 9.0 7.2

(b) この酵素のKmとVmaxを求めよ。
(c) 基質濃度が5mMのとき何%の酵素が基質と結合しているか。また10mMの阻害剤があるときは何%の 酵素が基質と結合しているか。

5.右図に示すように、3種の DNA 断片(X cDNA fragment, EcoRI-PstI adaptor, pGEX-2T vector DNA fragment) を T4 DNA ligase を用いて結合させ、 大腸菌でX cDNA 産物を発現するプラスミド pGEX-2TX を構築する。 X cDNA fragment (2413 base pairs) 500 ng を用いて他の2種の DNA 断片と 1:1:1 の分子数比で 16℃,30 分間反応させ、その 50%が完全につながって pGEX-2TX となるようにするとき、T4 DNA ligase の所要量 (units) を求めよ。ただし、T4 DNA ligase は 0.08 units (Weiss units) で、制限酵素HindIII(5'A↓AGCTT3')により 完全切断したλファージ(注) DNA 25μg を 16℃で 30分間に 50% つなぐ活性を持つ。EcoRI-PstI adaptor は 5'AATTTGCA 3' の配列を持つ 1本鎖 DNA。DNA1塩基(ヌクレオチド)の分子量は 330 daltons とする。
 (注)直鎖状 dsDNA ファージ。鎖長 48,502 bp。ファージ DNA の両末端は 12塩基の相補的接着末端を持ち、ligation 反応により環状 dsDNA となる。 HindIIIによる切断点7ヶ所。

6.今、1.0x107個の細胞を培養しているが、この細胞の倍加時間は20時間であった。 2.0x108個の細胞を準備してそこから蛋白質を抽出したい。今から何時間後に2.0x108個 の細胞が準備できるか?
 この細胞から総蛋白質を粗抽出したところ、その液量は5.2mlとなった。ビウレット法 で蛋白質濃度を測定した。まず5.2mlから0.3mlをとりわけ、これに0.9mlの水を加えた。 このうすめた液0.5mlに対して4.5mlのビウレット試薬を加え発色させた。混合液の540nmの 吸光度は直径1cmの試験管で0.18であった。標準溶液(4.0mg/ml蛋白質を含む溶液0.5ml) に4.5mlのビウレット試薬を加えた時は同じサイズの試験管を用いて吸光度が0.12であった。 粗抽出液中の蛋白質濃度と抽出された総蛋白質量はいくらか?
 この粗抽出液から精製を行い目的とする蛋白質 A を得た。分子量(MW)を推定するため にSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ったところ、移動度は0.6だった。MWが100000の 蛋白質 B 、30000の蛋白質 C を同じゲルを用いて泳動した場合の、各々の移動度は0.2、0.9 であった。A のMWはいくらと推定されるか?(答えは指数で表わしてもよい)。
 必要ならばlog2=0.30、log3=0.48として計算してもよい。

7.(ア)60アミノ酸残基からなる精製度100%の酵素タンパク質STの乾燥サンプル を最終400μlになるように緩衝液に溶かした。このうち15μl取り出し、 光路長1cmのキュベット中で885μlの同じ緩衝液と混合し、280nmにおける 吸光度を測定したところ、0.0030という値を得た。最初のST溶液の濃度を μg/ml単位で求めよ。ただしSTのモル吸光係数を18600(M-1/cm-1) ,分子量を6200とする。
(イ)また、活性発現メカニズムを調べるために,ST中の活性ポケットに 位置する一つの Tyr残基(分子量:180)を Trp残基(分子量:210)に 部位指定的に置換した。この精製変異体STを分光学的に定量(吸光係数の 加成性は成立することを前提)して、野生型STと同一濃度の溶液を同じく 400μl調製した。(ア)と全く同じ操作手順で吸光度を測定した場合、 吸光度(小数点以下4桁まで)はいくつであったか?なお Trp と Tyr の モル吸光係数はそれぞれ、5500と1200(M-1/cm-1)である。 また、このアミノ酸置換によってSTの溶解度、コンフォメーションが変わる ことはない。

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