研究目的
 分子やイオンがナノオーダーの空間に束縛されると、一般的には見られない特異な構造や物性を示すことが知られている。我々は、固体細孔壁によって囲まれたナノ空間(約1 nm)に拘束されたイオン溶液(ナノ溶液)が、非常に歪んだ水和構造を形成している可能性を報告した。一方、界面活性剤が形成する逆ミセルの内水相にもナノオーダーサイズの電解質水溶液が存在するため、特異なイオンの水和構造が形成されている可能性がある。そこで、逆ミセル内水相(ナノ液滴)中に束縛されたイオンの水和構造をX線吸収分光法から検討している。X線吸収分光法はXAFS(X-ray Absorption Fine Structure=X線吸収微細構造)という名称で知られている手法で、ターゲットとする原子・イオン近傍の構造(配位している原子種とその数、距離、熱振動の状態等)を選択的に解析できる手法である。

将来の方向性
 ナノ溶液やナノ液滴に対する理解が深まることで、例えば、電極材料で活性炭のようにナノオーダーの細孔を多量に有する場合、イオンの吸脱着特性が重要であるが、束縛状態におけるイオンの特性をその近傍の状態も含めて議論でき、更に優れた材料設計に役立てることも可能である。また、生体内で重要な役割を担っているイオンについても、ナノサイズの溶媒和構造が重要である可能性もあり、それらとの接点も探っている。

キーワード

 ナノ空間、ナノ溶液、ナノ液滴、XAFS


関連装置

XAFS     →  イオンの水和構造解析