Research


ジオシンセティクス補強土一体橋梁に関する研究


これまで建設された非常に多数の橋梁の殆どは、この図に示す従来型橋梁である。即ち、橋台は1)補強していない盛土を抗土圧構造物として水平方向に支えて、2)可動と固定支承によって桁を支持している。しかし、この形式は橋台、盛土、桁が独立であるため常時の盛土の沈下や低い耐震性等の様々問題があり、従って経済的でなく不合理な構造である。これらの欠点の内、構造工学的な欠点に克服しようとしたのが英国と北米で標準工法になりつつある橋台と桁が一体となった一体橋梁である。また、盛土の欠点を克服しようとしたのが龍岡等の研究に基づいて日本で建設された橋台に定着したジオシンセティックスで盛土を補強したGRS擁壁橋梁である。しかし、両者とも欠点が残っていることから、東京理科大学地盤工学研究室では、「両者の長所を生かし欠点を克服する」ように両者を統合した新しい橋梁形式、GRS一体橋梁を発案し研究してきている。この新形式は橋台、桁、盛土が一体となったものであり、常時と地震時の安定性、経済性に非常に優れていて、殆どの新設の橋梁をこの形式で建設することができる。現在、その実用化に向けた研究を実務技術者・研究者と共同研究している。









重要構造物としてのセメント改良補強土の変形強度特性に関する研究


土は、そのままでコンクリートよりも遙かに柔らかく弱く、建設材料としては材質が安定していない。土はセメント混合することにより硬く強くなるが、従来はセメント改良盛土に対する信頼性は低く、コンクリートよりも遙かに劣った材料として重要構造物の建設には用いられてこなかった。しかし、理科大等での詳細なセメント改良土の変形強度特性の研究により、コンクリートに用いる量の1/5程度以下でも適切な量のセメントを混合して適切な含水比で良く締め固めることにより、十分な硬さと強度を持つ盛土となることができることが分かってきた。特に、橋台のような重要で許容変形量が小さい構造物をセメント改良土を用いることにより非常に経済的に建設できること分かってきた。図に示すのは、九州新幹線で実際に建設されたセメント改良盛土を本体とした橋台である。この工法を普及するために、現在セメント改良土の変形強度特性を詳細に研究している。特に、クリープ変形特性を含めた弾粘塑性特性とそれに対する年代効果を三軸圧縮試験で研究している。

より強い盛土を合理的に設計・施工するための締固めと強度変形特性に関する研究


コンクリート等の人工建設材料では、より強い材料を経済的に実現できるように努力して、実現した強い強度に基づいて構造物の設計を行う。しかし、土を締固めて道路・鉄道・宅地・河川堤防等の盛土を建設する場合は、この普遍的工学原理が上手く適用されていない。その最大の理由は、土の変形強度特性が極めて複雑であり、また現場で締固めを正確に管理するのが困難であるため、土の変形強度特性を完全塑性体と非常に単純化した上で、現場での盛土の締固めの程度(締固め度)を適切には反映していない「いわゆる標準せん断強度」を設計で使用しているからである。従って、現在の設計体系は、現場でより良い盛土材料をより良く締固めてより強い盛土を建設することを奨励することにはなっていない。東京理科大地盤研究室では、この現在の設計体系を改善して新しい設計法を提案するために、各種の盛土材料を用いた三軸圧縮試験、平面ひずみ圧縮試験、一面せん断試験によって変形強度特性と締固め度の関係を詳細に研究してきている。特に、通常の方法で良く締固めた盛土に対して従来の設計法は過度に安全側であることが明らかになってきた。写真は、理科大で現場の礫質盛土材料を研究するために開発した大型の三軸圧縮試験装置である。このような大型三軸圧縮試験装置は、我が国の他の大学では殆ど例がない。

軽量混合改良土工法(気泡混合・EPSビーズ混合)に関する研究


地盤の上で活動をする我々にとって、地盤の安定性は重要な問題です。地震時の液状化や流動に対する地盤の抵抗性を高めるために、地盤に砂の柱を圧入して周辺地盤の密度を高めたり、薬液を注入してゼリー状の地盤を形成したり、透水性の良い大きな粒径の礫で柱状体を形成し地震時に発生する間隙水圧を速やかに消散し地盤の安定性を確保したり、さまざまな方法で対処しています。軟弱地盤上に盛土をする際には、下部の地盤の支持力を高めるために攪拌混合によりセメントの柱状体を地盤内に形成したり、地盤内にある余分な間隙水を抜いて地盤の密度を高めるために透水性の良い材料を地盤内に幾重にも圧入して圧密促進を図ったり、気泡混合の技術やEPSビーズ軽量材を用いて盛土自体を軽量化したりするなど、さまざまな技術が用途に応じて活かされている。現在我々は、気泡混合やEPSビーズ混合により地盤構造物を軽量化する技術に着目して研究を進めています。気泡やEPSビーズの混入により軽量化できる反面、これらの混合物質は非常に収縮しやすいため、その強度・変形特性の把握が重要となってきます。

地盤材料のクリープ特性などの粘性に関する研究


同一の応力状態で時間とともに変形が進行する現象をクリープ、異なるひずみ速度で異なる応力ひずみ関係を示すことを載荷速度効果、ひずみ状態を固定した状態で応力が低下する現象を応力緩和と言う。これらの現象を引き起こす性質を粘性と言う。地盤材料の粘性の研究は、地盤工学における根幹的で重要な学術的な研究である。同時に、建築物・橋台・軟弱地盤上の盛土などの構造物の長期残留沈下を正確に予測するためには必須の研究である。関西空港の海上盛土は、厚い粘土地盤上に建設された。図1に示すように、非常に厚い洪積粘土層の圧縮は粘性を考慮しない理論では正確に予測できないことが明らかになってきた。東京理科大学を中心した最近の研究により、粘性土、砂・礫、軟岩など多様な地盤材料の多様な粘性が明らかになってきた。これらの研究では多くの新発見があったが、中でも驚くべき発見は、貧配合の粒子が丸い砂礫は、早く載荷するほど(つまり、ひずみ速度が大きいほど)強度が小さくなる事実である(図1)。同時に理論的な研究も進展してきている。図2に示すように、載荷の途中でひずみ速度が変化したりクリープ載荷するような複雑な載荷履歴に対しても、その変形を予測できるようになってきた。現在、多様な地盤材料の多様な載荷条件での粘性を詳細に検討し、現場での多様な地盤の複雑な載荷条件でのクリープ変形、載荷速度効果等を予測する研究を行っている。



様々な飽和条件下にある砂質土の液状化・流動特性

地震が起こるたびに、沿岸域の埋立て地盤を中心に、地盤の液状化や流動による被害が生じています。地震時の砂地盤の液状化や流動の発生予測には、液状化強度や残留強度が用いられますが、これらの物性は、完全飽和状態にある砂供試体を用いた室内三軸試験により評価されてきました。しかし、静水圧が低い地下水面以深近傍には、地下水面の季節・日変動もともない、微気泡を含んだ「不完全飽和」状態にある層が存在することが知られてきました。また、地下水面以浅近傍には、メニスカス作用によりサクションの作用を受ける「不飽和層」が存在しています。私たちは、これらの飽和状態が土の液状化強度や残留強度に及ぼす影響を、室内三軸試験や一面せん断試験といった試験法で調べています。



砂地盤の地震時挙動の評価への原位置貫入試験の有効利用

地盤調査には、一般に原位置貫入試験として標準貫入試験が多用されますが、地震被害調査や宅地盛土地盤の強度評価に、比較的簡便に試験実施が可能なスウェーデン式サウンディング試験が用いられます。また、オペレータの操作誤差が比較的少ないと言われる静的コーン貫入試験の利用も検討されてきています。標準貫入試験から土のせん断抵抗角や相対密度を推定する方法や、液状化強度や残留強度を推定する方法が、経験的手法に基づいて提案されてきていますが、スウェーデン式サウンディング試験や静的コーン貫入試験を用いた方法は、未だ確立されたものがありません。私たちは、地盤内の応力状態を再現できる加圧型土槽を用いて、これらの貫入試験と土の物性の関係を明らかにする一方、室内三軸試験を用いて、土の残留強度や液状化強度と土の物性との関係を明らかにしてきています。これら両者を結び付けることにより、原位置貫入試験から、直接残留強度や液状化強度を推定する方法を提案しています。地震発生にともなう地盤災害発生時には、スウェーデン式サウンディング試験を用いた調査や試料採取を随時行なってきています



地震時液状化に伴う側方流動特性

新しい研究テーマとして、地震時液状化にともなう砂地盤の側方流動特性について取り組み始めています。沿岸域の地盤において、地震による液状化により大きく流動する現象が数多く発生しています。この地盤の大きな流動変形量の要因として、地盤内に介在する薄い不透水層の存在や、液状化後の上向き浸透流の影響などが挙げられてきていますが、私たちは、この地盤の流動現象にともなう発生変形量の基本的な推定方法を、中空ねじりせん断試験を用いて検討する予定です。