乾燥した舌

 

乾燥した舌 膨れあがる街の扁桃 中心性の

肥満がはじまる バッファリンを二錠飲む

頭痛が伝播する 部屋中が揺れる おごれ

るものひさしからず 人間物を欲すなかれ

あまい物が好き 定義されてしまった物体

二階から卵を落とす ひよこの足だけが歩い

ている白い道 観念が発電される 右よりの

傾向 それはきっと頭痛の前兆に違いない

間違った考えを組み立てる 腸のうしろ側

に花が咲く 何かが利用される アレルギッ

シュな花 「きのうの夜、寝しなに雨が降っ

とったけん」「雨、ふってました」「今日も

雨や思うて朝寝しとったらえらい損したわ」

不連続な光線が破れた皮膚をじぐざぐに縫い

合わせる 他人が深呼吸する 一匹のウイル

ス 天皇の頭にはえが止まる 温室の中で時

間が分裂する 危険人物 霊が体の中で垂直

に立っている 霊がDNAの間に侵入する

ダイヤルが一つ回される 自律のスイッチが

Offになる 傷だらけのミシン 治療は延

期される 気が付くと電信柱の近くに立って

いた 性ホルモンを誰かが撒き散らしている

そこからは原因が除去されていた 現象の

みがはきちらされている 身元不明の風が地球

の引力に引かれていた 私の魂は月にむかっ

1cm 伸びている 月の起源 もつれた

脈拍がつたわっていく 屈折率の異なる空間

があちこちにあった 度の強いメガネをかけ

た蟲が血液を吸っていた 化学反応 目隠し

された感覚 内耳が地面に置かれている「こ

いつらはみんなキッキだ」 朝鮮のスパイが

紛れ込んでいる 日本海沿岸に物理的が加

わる 足し算される 入力される

 

冷蔵庫で卵が冷えている

星の内部の温度 造山運動 灼熱の赤道

を太陽が公転する 事物と現象の合の子 手

を抜かれている アンテナが林立するウイル

スの街 神経を電気が走る 構造は一日前に

予期される 昨日の風が吹いている 冷蔵庫の

中で卵が冷えている 階段状の道 気管支ぜ

んそくのゼラルメン 泡立つ愛情 双生児の

空間 歯車がまわりはじめる トランジスタ

ラジオ 急に歌い始める 誰も知らない歌謡曲

 現在の前後が逆になる 腑いている裸の

マネキン 難民の白い手 顔を撫でる

 

「ラジオ番組で連絡とったの」「ラジオ番組は特

定の番組かって聞いた」「いくつなの」年

くった女のヒステリー「しゃべってる内容

がおかしいだけで」「何が目的なの」「もは

や恋愛関係といえるような簡単なものではな

あい」「何が目的か聞いてもしかたがない

し」「ラジオを通じて話しかけてきた」「そ

うだったらすごいな」「よっぽどへんなチャ

ンス、偶然」「いつもいない人がいた」「そ

れはよかった」「自腹切ってどうしたの」

「どうしたのって、何かどうしたの」「だっ

て涙ぐんでたよ」「まだ十代だぜ」「でもし

らないよ」「気持ちの整理がつかないから、

手紙に書いて送るって」「頭にあたったら死

んでたんじゃない」「でも快感だね」

パクパクするアヒルのロ

 

 

ジュラルミン 混乱するラジオ 笑っている

笑った わらったな 短く中毒している

ジュラルミンの声が代謝される 犬が出血し

たまま走る 不安定な耳 空間が脱水する

一過性の死 途端に傾向が直線化する リボ

ン ビタミンが足りない不完全な人体 笑い

か新生される 夜間の発作 恐い 子豚にち

かづくな 白血球がやってくる 暗号 多く

の場合 未分化で女に対応しない 子供に近

似される 相関曲線 防腐剤無添加の魂 私

のあたまの上に限定している 染色された意味

細菌がゆっくり発育する 細菌がゆっくり

下降する それは時間に依存している 耽溺

している テレビが結晶化している 犬は死

んでいる 化膿した指 パクパクするアヒル

の口 無関係な電波が送信されつづけている

操作線の向こう側に広がる大脳皮質 十年

前の8mmフィルムが現像された 異常な食事

内容 布団の中で人形が眠る はりつけにさ

れた雑草 拝みがとまらない 事の効能書と

化粧品のモデル 冷たい精液を分泌する青い

舌 「誕生日だって」電話はまだかかってこ

ない くしゃくしゃのティッシュペーパー 十

年前の男の顔が動く 男の十年が間延びする

スローモーションのかかったインコが空を

飛んでいる 死んでいる 墜ちていく

 

 

同じ時、同じ場所に蘇ってくる緑色のカメ

 

凍った花に幸福が訪れる 次々に自殺する日

本人 地獄を語る神様の力 新聞が配られる

過去に繋がる中古の夢 日本脳炎の闇 小

児麻痺 時々けいれんする言葉の微量な拡散

腹式呼吸 視界がかびをふいている 正し

いものの組み合わせ 正義が不活化されてい

た 体中の下水が汚水処理されている 季節

とは無関係な憂鬱 かゆい 白い粉 少女が

密造される 体中をネコが走り回る 痺れ

同じ時、同じ場所に蘇ってくる緑色のカメ

二股のキノコ 血を吐いている 狂人が

ハサミを持っている その思考がもつれる

輸血が必要 「悪いことをした」「今、どこ

にいるかは言えない」「完全に一方的な片思い

だからね」「探したよ」「知らんかっ

た」「ラジオに政治的メッセージが加わっ

て」「ラジオ局と適格とっている」「考え

すぎなんじゃないの」「今に猟奇事件で有名になるよ」「そのうちラジオ

の音がきこえてくる」「電車で行くのは小学

生が、おばあちゃんに会いにいくみたいで嫌

だ」不眠症のカエル 映画が始まる

混じった化学物質をくわされる 死亡診断書

第二の命を輸入する 誤りはない 命は交

換され、脳軟化が起こっている 有書な寿命

の伸び縮み 一人の人間が多くの人間に交換

されていた 誤りはどれか 赤血球が空気に

充満している 危険な信号が鼓膜を震わせて

いる 悪い病気が流行る前に「豚のダンス

は遺伝する」てんかんがちかづく 事物の

二面性が乖離する「私」に汚染された地

下街 遠くで星が爆発する 地下を走る風

電信柱に魚が縛られている 誰かが暗号を作

製する 畳の下に隠された日本地図 畳の目

を数える 人の焼ける臭いがする 魂の分化

裸の神経がピリッピリッと震える 近くで

死者の声がする 月を見つめすぎてめくらに

なっためくらが歩いている 星から風が吹い

てくる 笑いがこだまする 大気中の酸素が

欠乏する 人間の中から白痴な蟲がしみでて

くる 原体験のない子供が母乳をすする 血

液が沸騰する エスパー まんじゅうが時速

を持っている 北を指す指

 

 

「最近、薬の量が多くって、ごめんなさい

ろれつが回らないでしょ でも グングン慣

れてきてるから 成人の日に失敗しちゃって

まだ一人で外にでれないの 別にそんなん

じゃなくて量を少し多く飲みすぎただけなん

だけど 先生におこられたわ ひさしぶりに

どうしてるかと思って 私もまだ、いきてま

すって すごい元気なの 今日はいろんな人

に電話しようと思って、10円玉いっぱい

持ってるの」

 

トリとカメが同じ軸を中心にしている

 

右の頚静脈から昼が 左から夜が注入され

小脳のあたりで混ざりあっている 一千年の

吸気 肺がパンパンに脹れあがる 成長ホル

モンが流れ込んでいる この結果は意味して

いる けだるさが筋肉の中で発酵している

100年が過ぎる今 さらに1000年

トリとカメが同じ軸を中心にしている 色が

欲しくない 総天然色 生まれ変わる 伝説

の終焉 テレビのシリーズものが今日

も始まる 一本の血管が抽選される くさい

腐った魚が血液の中に浮いている 魚のえ

らを通して呼吸している 魚は体の深い所へ

潜水していった 犠牲者達の饗宴 事故が連

結している 天気予報 細かく衰えていく健

康 級慢な脱分極が始まる 両極の機構 空

席に水が溢れる 意味のない予防接種 降神術

子午線から離れるアザミの花 卵が割れ

ない 交感神経性の興奮が遮断される 狂っ

た年賀状 合言葉の欠如 水玉模様のスカ

ート 精神病院の昼飯会 新聞を読み耽る

「外出許可を貰えないの」「先生はあなたを

きらってるわ」「女の先生、なめくじを飼っ

てる」「喉がつまっておかゆも食べられない

わ」「もう歩けないかもしれない」ラブレター

何千枚のラブレター 蛾が停止する 読

み書きができない 「文庫本買ってきて頂

戴」 会話がインコの舌から再生される 過

去形の光 事物の縫い目がほどけてくる

一枚の皮膚 「事物がくっついて離れないの

よ」立体的な霊感 知性の粉末 煙たい

精神病院にのろしが上がる 赤いものがチラ

チラする 暗号は解読されたらしい ラジオ

が玉音放送を始める スピリチェアルな声帯

ビルビル震える インコのくちばしを取り

付ける コップに水がつがれる 潜在的な雨

が降る 全都市の停電 過酸化水素水で髪を

漂白する 終身刑 年金 元素の周期律 脳

神経の定期検査 終止符は打たれる 男の体

は腐敗しやすい傾向にあった 賛美歌 欝易

風 悲劇的な交信

 

 

太陽の表面に転々と咲くケシの花

 

 

風化されない魂 舌が回らない 会話は成立

しない 擦れ違いざまに刺せ 刺し殺せ 電波が

飛び交う 次元装置が動いている 毛が

抜け替わる 細かい毛が充満する ウジ蟲が

進化する 太陽の表面には転々とケシの花が

咲いている 指揮者がけいれんしている 花

粉がまっている 意味が分解されている

「彼女は布教活動をやっている」 網膜に光

があたる 嫌気的生物活動 時計のネジをま

ききる 胎盤をかじる新生児 日の丸が振ら

れる 差し上げられた両手が何かを掴む 保

護色 エゴン シーレ感覚の人物 録画され

る水銀の原子番号 鳥が低空飛行する霊感の

迷路

 

 

「こいつら、食うのが下手だな」「ハトはど

こにでもいるな」「もうすぐシベリアへ帰っ

ていくんだよ」

 

 

「ネズミに餌やらなくっちゃ」「飢えちゃ

う」「飢えたほうかいいよ」「飢えたほうが

いっしょうけんめい食うから」「そうね、か

わいいもんね」

 

 

見ず知らずの他人に声をかけられて、体中の

血液の赤血球が音もなくはじける 街の空に

赤血球が浮かび、ゆっくりと回遊し、宇宙の

末梢血管で溶血する それが赤い雨と

なって降ってくる 機械的に時間が過ぎる

無感覚の疾病の空白 無限の言葉が幼児の口

に詰め込まれ 幼児は唖になる

 

水栽培される豚の足

 

 

「わたしは仏像に名前をつけて飼っている」

漬物にされた仏像 顔面に血管が浮かんでく

る 人相 卵分割された生命 人体から空気

が抜けている スッスッと横に流れる 都市

の空が散髪される ごみばこに捨てられた

乾燥したシナプス 観念の砂漠 観察を中絶

する ひとつふたつと数え上げなければなら

ない 刃物でピシュッと切り裂く 不感症 ゆ

るやかな拒絶 目をキョロキョロする 豚の

足 傷口に咲くはすの花 20のスイッチを

もつピアノ うっかりしていると卵がかえっ

てしまう 卵がかえる前に検算する 時

間が培養される メトロノーム中毒 パトカ

ーの音 位相の異なる音の中にはいっていけ

脱ぎ捨てられた衣服 必然性のない直感が

走る 排気音 禁断症状 第六感とは時間に

対する感覚のことである 「静けさや むし

ずが走る 丘の上」 背後霊を背負って 四

肢の間接を外し心に入る 会話脈絡がはずさ

れている

 

 

嫌じゃのう 天井の上を隣のおねえちゃんが歩

くのでうるさい 隣のおねえちゃんはやせて

いるので天井の上を歩かせてあげている 隣

の隣のおじさんはキッキです キッキといいよ

はいい組み合わせ 佐清さんはびっこです

逆立ちと腹筋が得意です でもわたしが寄っ

ていくといざって歩きます 御飯は一個ずつ

食べます パカビーさんは性格が悪く社会の

一員としてやっていけません でも美人です

 

 

教養をださないでよ 果汁 たいへん御迷惑

をかけました 「うちの弟 すっごく鼻血が

でやすいの だからどばーって出るの だか

ら大変なの」ドラム缶と生い立ち 「家の

中で帽子をかぶると禿げるって」「じゃあ

バスの中は」「バスの中もそうよ」アハハア

ハハハハ アハハハ

 

 

女が眼鏡をはずすと話が通じなくなる

 

 

手紙が届く 銭湯で沈黙する 基地へのピク

ニック まだ誰も知らない 爬虫類の

sex 空集合 一日の中の一秒が消失する

グルグル回る バイオリンがばらばらになっ

て音にちかづく レセプターに結合する と

さかをつけて歩く子供達 彼等に考証が微分

される 寿命がつきる 統計学 女が眼鏡を

はずす 話がつうじない 右左 境界がはっ

きりしない思考が液体に溶けていた 細胞が

生まれる 生まれなさい 生まれなさい 共

感のない世界 接触のない孤立した指が方向

をしめしている ボロボロの木橋をわたるみど

り色のピラミッド それがプレゼント

たてつづけに爪が伸びる

 

 

新しい遠心力 circadian rhythum 君の直

腸温 言葉じりに差し込まれた 希釈された

ピアノの打撃音 伝言が伝わらない 皮膚の

下のだるい指の動き 包まれている眠い感覚

が指へ届く           .

 

 

トイレに腰掛けたまま成仏している少年の体

にタコの血が流れる

 

 

点滅する過去 長い吸息の時間 再び吐き始め

める時 止まり木に止まる あるいは精神病

者 大麻もしくは阿片の中毒者にあらず

レム睡眠 自転する トイレットペーパー

「木が神経の樹状突起に見えるんだよ」

ひずみが必要 魔法 方程式は右から左へ

冷蔵庫のスイッチが入る ライターの火 壁

面のポスター 誤差の中へ ひびわれ 砂浜

に打ち上げられる 死体 じゅうたんに混ざ

る陰毛 脱水された愛情 不変の温度が漂う

コードが伸びる 後躯麻痺のカメ 煮沸す

る 消耗するテレパシー トイレに腰掛けた

まま 成仏している 少年の体にタコの血が

流れる 息を吹き込む 曲げられたスプーン

を持った夢遊病者 寝言を録音する ギョロ

目の少年にお姉さんと呼ばれて 貧血する

空前絶後 メーターが音をたてる ガシャガシャ

 

 

マカオでとばくし、フグにあたるバーキンソン病のヨダレ女

 

 

水がアスファルトの上を逃げていく 日章旗

をかかげる 真実は二通りある 普段着のま

まで ゼロ戦乗りだぜ 俺は マカオでとば

く 日輪がグイグイ伸びる 知能のカタログ

を取り寄せる フグにあたる 水晶体が緑色

に曇る ギザギザの水 濃度勾配にしたがう

パーキンソン病の涎女 蝶が麻酔され

て空中にはりつけられている 冷気が渦巻く

性的興奮が解除される 解禁される 糖尿

病のイルカ あめふらしがヌルヌルする サ

イキックなはぶらし運動 ハアハア ディスコ

の盲導犬 恐作が1mm間隔で立てられている

狂気の円周率 それはきれいだ 道端で卵

を生み付けている少女と同一人物だ 慣習が

取り外された日常 球形の眠り 土人がたい

こをたたいている 命懸けで眠りつづける縦

と横 イヤリング マニキュアの指に 指先

が続く ストリッパー セリーヌミサ 名前

が思い出せない ガラガラ回るメリーゴーラ

ンドの馬 水族館のあり地獄 田園が一面に

出血している 百姓の物理 南に向かって走

るささくれだった 止めたはずの流行語 都会

に生育する心身症 21世紀の降水確率は変

化しない 偽造されるテキサス 疑似体験

ストローでチュウチュウしたい 陽極と陰極

か溶け込む円の中心

 

 

 

口述筆記される手話の世界 麻薬犬 コロリ

病 「ピラミッド、ピラミッドと考えている

うちにだんだん緑色という考えが浮かんでき

たわけで 連想だな」「緑色とピラミッドの

どちらを優先するかというのも問題になった

わけだけど」「正二十面体の緑色のガラスが

あったんだけど それを見た瞬間 これはピ

ラミッドの塊だって思った」

 

 

鼻を顔の中央にもってこないとウシに見えない

 

 

悪いことをしたから悲しい 寒気が周期的に

襲ってくる 「私は意思の弱いほうだと思う

けど」「弱いほうじゃないよ 君みたいなの

は」「ラーメンじゃないんだし」「足がつる

歩けなくなる 不具者だよ まるで」「前

よりよくなったんだけどね」「ひどいじゃな

い 歩けないの 痛くはないの」「でもけい

れんしたみたいでバランスがとれない」「歩

けなくなったらどうしよう」「そんな 妄想

だよ」「筋肉に異常はないんだし 神経の

問題なんじゃない」「痛くない 歩ける 歩け

る」「嫌みなの」「そんなことないよ」「口

の中に飴を入れたら」「君、5錠も飲んだ

の」「私 今日からはじめるんだから」「あ

なたみたいな人は他の国に行ってもいないん

じゃない」

 

 

副作用の都市

 

 

副作用のネコ グルグル喉をならす かちか

ちの凝固 心臓の鼓動が一回欠ける 転調す

る 影が複雑にはりついた 激痛が皮膚から

吹き出した 暗い光 単調な 自虐的な

遺言は残された 内面に死斑がでる 背

中の逆三角形のあざ 暗流する不眠症の都市

いわしが回遊する どえらいことがおこる

保険をかける バイリンガルの少女 不定

期な脱力 入門書がばらばらにされて操作さ

れている ヘソの尾 焦点があわないイヌに

かまれる 採血される 不安がくもの巣に

引っ掛かる ハエ叩きで叩きつぶすしかない

吹き替えられた神様の声 水溜まりを越え

るウサギの耳 時間がゆるい 強力な寄生虫

が月からやってくる 極彩色の沈黙 うえつ

がれる価値観の内部 歯がぼろぼろぬけおち

る 飯食べてますか 不条理な笑いがミカン

のかわをむく 魚の足をした天使 静脈を見

せる銃角の街路 波動のみが存在する 常軌

を逸した三人分の昼食 鉛筆を削る薬物中毒

者 脳の中の空洞で足のはえたヘビが2回い

じめられる 二等分された磁石 人工心臓

 

 

たろうは泣き笑いする

 

 

物事には手続きがない 性欲 たろうは泣き

笑いする

 

桜に菊が混入している

 

 

春らしい 風土病 気が弱くなる ただで名

前をつけてもらう シャッターがギトッとお

ちる 象徴的な腹痛 君の目の前で扉が開

く かぎのかからない萌 二分の三拍子 全

体性の存在しない レントゲンフィルムか現

像される 黒板に書き散らされた数式 ダン

ポールの中 変身するDNAの断片 癌化す

る風景 昆虫の触角をもぐ 値切られた生ま

れつき 何のこっちゃ 何のこっちゃ 待機

する錆びた注射針 放射能に汚染された体

せっけんでこする グルグル回る夜と昼 ピ

ンセットで米粒をつまみあげ ジャガタラの

テープがギュルギュルうなる 腕時計の文字

盤 カレンダーが破られる 異常生殖 ガイ

ガーカウンターがガーガー 蒸留水を飲む

タコ足配線 桜が満開 狂気の花 萄が混入

する 消費者 活動家を捜せ デジタルの視覚

 味覚 脳神経に支配された6時30分29秒

 右の眼球が眠り始める 左の前眼房に

針が刺し込まれ 整理された指紋 お守りを

解体する 名刺 ぬいぐるみのクマ コドモ

ダマシ 印字されるふなの踊り 手が全身に

拡散する ネコに咬まれる発熱する子供 お

としよりとはいえ操縦不能のイヌ 

女の子が生まれる 放課後のサイレン 

聞き間違い 勝手な

 

 

電池の切れた小指がはいまわる

 

 

ザクザク花が咲いている 悲しい 真空管の

焼ける音 出来上がりが陳列されている 上

昇気流 言語的に速い 言葉の裏に染み付い

ている 青葉の陰に血まみれる 三角形の太

陽 ゲンゴロウが水面に目を出している 名

前負けした死体にハンコをおす 遺伝子が治

療される 舌が出てくる 胎児がひねりださ

れる 暴発する弾丸 テロリストの口が開く

本物がつまるところ 遠近法の混乱したモデル

 朝顔に水をやらなくては 連続性の滝

再現性の欠けた万華鏡の中に血を吐く

 頭ごなしの否定 内的距離を保て

 結婚したら女の頭部が浮遊してくる ある形が欠けている

 省略された関係 何一つありはしない

 大腿に陰部が接合する現場で新人が収縮しきる

 乾燥する女体 偶像を崇拝する

きっかけが分類される 一枚の鏡像体

 射精するアイドル

 朝のラジオ体操で狂った男が 包丁を振り回す 手のつけられない知的な固体の時代

 世代交代の激しい死体にキノコがはえる 思い詰める花屋の天使

 おとりの花 傷だよ 傷口

 くだかれた歯が生える土地 不毛の地下 冬眠する第三脳室にウジがわく

 

 

電池のきれた 中空の正二十面体が盗聴している

 唇を読み取られる 唾液の過剰分泌

なぞの中 なぞは解けない なぞかける

 石油をゴクゴク飲む 終末の大仏

 魚の骨をえり分ける 病人は治らない道を遠まわりする

腐ってくテレパシースのシグナルが転送されている

 刑務所で時間が道草をくっている

出会を慎重に回避する 進行形のディープキス

 超音波が流れる 思い出におゆをかける

 黒のストッキング

「知ってる クリソツのおんな」あいかわらずね 小指がはいまわる

 声が糸を引く マユを作る 蛾がふ化する

 振り付けられた いなか者は馬鹿をみる 論理に血縁関係はいらない

 脅迫する 在位60周年を祝う

 

 

重くて飛べないトリ

 

 

等身大の鏡がうめこまれた 馬を原子力発電

する 調律してください もちをくう一匹の

おたまじゃくしを追って 殺虫された魚屋ワ

ルツ その場で足踏みをしているような 砂

場で保護色を使うのは誰だ 心の夏至へ箸を

突き立てる 頭蓋骨には穴がプスプス空い

ていて局所的な快晴 梅雨が始まるこの暗号

をすばやく身につける わたしとおたまじゃ

くしのどこかが重なっていて 雨上がりには

虹がかかったりする 砂糖の過剰に溶けた風

景で 血か薄くなっていくジル 目の前で手

を合わせる二人の老人夫婦が合成される場所

言葉を覚える口がある 窓ガラスにひびが

入ってくる 私は卵を割るために二階に上

がって雨が降らないか確かめてから雨傘をバ

ラバラに骨組みだけにして畳の上を泳ぎ回っ

た それはまるで卵を割るためだけにそう

なっているので そのうちうれしくなってきた

平和が血溜まる傷口に塩を刷り込む

 液体のわたしは生物を飼う 献血する第三者

フエフエ 赤外傾向してくる声

 

原爆床屋で石油を飲みたい

 

感情が振り切れてしまい電話をかけても誰も

でない コールの音が響く 受話器をとらな

いのかもしれない 帽子が飛んでいく 刻印

された影 人相がはずされる さよならの合図

回転の狂ったテープレコーダー 石油を飲

みたい エプロンをつけた娘 句読点をつけ

られた歌手 自白したい 幻覚をみる 子供

が突然つんのめるように倒れる 閉まってい

たはずのドアがスルッとひらく 早回しで時

間が病んであちこちにむしくれができ 虫歯の

ような痛みが走っている くちばしを顔に取

り付けてあわをくうんだ 蘇生する北緯31度線 喉から手か出ますか

ひらがなでいいですから伝言してください

 

 

証拠一つない関係の殺人現場 単細胞を連行

する 「じゃんけんして負けても退院させて

くれない」「それじゃ刺激するからだめよ」

黒点が頭の中に増えてくる

 ひとつ ふたつ みっつ よっつ

「きのうより元気がないみたい」 イヌが吐く 錠剤の破片が出

てくる 雨に濡れる扇風機 歌を歌いなから

歩いている 小鳥屋のインコか寄り集まって

いる 取り調べ書の話を思い出す 誘導尋問

はやめてくれ 体の端から端へ悪発が走る

漢字の書き取りがしたい

 

 

宇宙人みたいな顔をして地下鉄の吊り広告を

かたっぱしから読んでいく 音と絶交する

巻き舌を使う宇宙人 新聞記事を切り抜く

左右が逆の画面 きんたろうのような髪をし

た女の子「味の素が食べたいの」「この手

袋は君のだろう」 イヌの鳴き真似をする

形態模写とも言うな 約束は遅れの中に半分

きえかかって存在する ネコババ 夕日に向

かって虫のように集まる恋人達 金魚色の空

を飛行せよ 本名を忘れてしまった「原爆」

というあだ名のわたし ことりの足の指を数

えるが きまって3本しかない 有機物の月

わたしは論埋の代わりに物理を使う

 防水された肉体 あっちいけ あっち、いけと鳥が鳴く

たんぱくしつの家

 

 

人間の出がらし たんぱくしつが歩いている

砂の詰まった心臓 よだれをたらす脳 へ

りくつをこねる 義眼を入れ替えて 人形を

刺身にする ウラウラする日本の足 組織が

関係している 八百長する 知性が手入れさ

れる 未遂の馬 あなたを傷害する白いイヌ

骨抜きにされて泡をふいている入れ墨 

執念が押し花にされている 仏にせまる高級な

茹で卵 命を速記する 近視の死者の水晶体

 

新宿トラッシュ

 

床一面にメリケン粉がぶちまけられ そのう

えで 男が転げ回っている 後ろでは黒ずく

めのコンピュータープログラマーがサックス

に脅えている 狂い始めた夜、魚の頭が無数

につまった乳母車にひとりの気違いがはいり

こんでいる 舞台でゲロを吐きころげる男達

オカルティストがギターを壊す ピアノの

鍵盤をもぐ 狂ったタコの世界 もうやめよ

うよ ぼろぼろのトラッシュ 世界中のどこ

にも存在しない半音階の一画 右周りに狂い

始める女達 ラリッた男が震えてる うじ虫

達の巣 終わりがない歯ぎしり マイナーの

真実 糞を焼く 宇宙人の身の上話 切り取

られた手首が這い回る それは俺の指だ 二

重に空回りする 音が体を震わせる 内耳が

破れる 毛穴が開く 神経が部屋中に伸びる

「仏像、仏像、退屈、退屈」宇宙人の声が

大きくなる 頭が溶ける 田植え 剰余価値

分解工場 黄色い痛み 収縮する大脳 テレ

パシーが使用されている

 幼虫が変態する一秒

 

 

ガセネタの音 二度と始まらない音楽

 毛穴から虫が這い出してくる 螺旋系 超小型の音が人の形に揺れ

ている 鳥が記号になって焼け落ちる 霧箱

の中の基線 偽物と本物がグルになっている

視線が付着する 網膜に鳥の足跡が残る 祈りの時刻 

子供の手の中で眠る 首が曲がる つむじが

曲がる そろばんをはじく 詩的言語の根絶

をめざす 子供の文字体 消印のない 巻き

こまれる 子供は作り直される 保管された

暗帯 ヤマがはずれる 隠語を使う 信号機の

赤 タイマーがセットされる 記号化されない寝言

 内包されないデタラメの音

 気の触れた三度日のトリップの正直 頚

が痛い 痛く無い 同じことを頼り返してい

る 気の遠くなりそうな午後 蟻が列を作っ

て耳の中にはいっていった 頭の中の蟻の巣

であたしは疲労していた 蟻は鼻の穴からも

はいってきた 誰も腐り始めた昨日の記憶から抜け出せない 

蟻は麻酔されて記憶物質に置きかえられていた 

脱落は継続している それがどうした ただ何でもよい 

だるい 眠い 眠れない 振り切れている 

白石民夫のサックスの音 ブレーキをかけたままアクセルを踏みつけている 

過剰な静止 加速された辞止 喉笛に 窒息のサックス 

バケツー杯の沈黙 細い足首にいけ花 どすのきいた 

オクターブを越えている 奥歯を噛み縮める 一回きりの悪夢 

360度の視野の中に十字ができる まにあわない 目がまわる

 死期を計算する

 

 

 

死滅した日光は光合成を拒否する 

金魚鉢を買った 金魚鉢が割れた 金魚を買った 金魚が死んだ 

眠い眠い 瞳を閉じない魚 透明な冷却 プヨプヨの女 

ネガティブな光が降りそそぐ こう門の周囲は今日も出血している 

単音の夢 みない 息を止めたまま

空気が焼けこげてアスファルトの上を這いまわっている

 

 

 

トラッシュの階段を二段降りる 一段上がる

タンゴのステップ エセ学者は天然記念物の女を連れて歩く 茶柱が立つ頭の中

 ビニール袋に包まれた 青空一面の 視力が回復する 奇跡

音が急激に空間から一本ずつ抜き取られている

抜け落ちた空間に坊主の頭がゴリゴリし

た 直進しない時間 死角が形成されている

錯覚と幻覚 春美聞こえる 空気が物質

にはりついて離れない 触れるけれど見えな

い 間違いなく静脈を探しあてる21ゲージ

の注射針 非公開の歯 時間が巻き戻されて

いる 気持ちがいい心臓マッサージ

 体重計の上で育つ子供たち 横倒しのテレフォンボックス

 時間恐怖症 測定障害 仏壇返し海

 

沈黙を支配する 紫外の原理 常に常軌を逸

脱する 分身が横行する 両立する矛盾 落

下しつつある透明な太陽 七色に分けられて

いる白痴が歩く 古典的な発光 集金人が水

で希釈される 観察者の介入を回避する 赤

いセルロイドごしに ガスが漏れている

銀色の太陽 動く刺青

人工三重苦のヘレンケラー 神経質なサリドマイド

 

「結婚祝いは何にしようかしらと思ってた

の」「結婚なんてできるわけがないでしょ」

「彼女はけなげな人ね」「あなただってけな

げでしょ」「何で」「そんな気がしたから」

「ほんとはそうなの」

 

 

 

 

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The depth of Ryo Goitsuka