赤外自由電子レーザー研究センター

» FEL装置 (@FEL-TUS)

当センターおよび設置されているFEL装置は、しばしばFEL-TUS (FEL at Tokyo University of Science: フェルタス)という略称で呼ばれます。センターに設置されているFEL装置は2台あり、1台は既に発振して光実験に利用されている中赤外自由電子レーザー(MIR-FEL; Mid-Infrared Free Electron Laser)で、もう1台は発振に向けて調整中の遠赤外自由電子レーザー(FIR-FEL; Far-Infrared Free Electron Laser)です。どちらも基本的には同様な装置構成で、電子ビームを生成する「RF(高周波)電子銃」、電子ビームを加速する「加速管」、電子ビームを蛇行させて光を発生させる「アンジュレーター」(永久磁石列)、そして光を増幅し発振させる「光共振器」で構成されています。 装置室は、放射線の遮蔽のためコンクリート壁(厚さ2m)で囲まれています。実験に利用される光は、装置室にある補償光学系により平行光に変換され、床下のピットに設置された真空ビームダクトを通して各実験室に導光されます。FEL装置を駆動する高周波電源(クライストロン)は、装置室横の装置準備室に設置されていて、導波管を通じて「RF電子銃」、「加速管」に大電力高周波が供給されます。FEL装置の運転には大電力を必要とするため、2台を同時に運転することはできず、導波管切替器を用いて、一方のFELのみが運転できます。

図1: 【FEL装置室とMIR-FELビームライン】
図2: 【クライストロン】

1-1. MIR-FEL

図3: 【MIR-FEL発振装置】
表1: 【MIR-FEL装置】
電子ビーム源RFガン
カソードLaB6単結晶
加速器
加速エネルギー40 MeV (max.)
周波数2856 MHz
アンジュレータハルバッハ型
磁場周期32 mm
周期数43 cycle
磁場強度0.83 T (max.)

当研究センターにおいて利用可能な光は、中赤外領域を発振するMIR-FEL装置によって供給されています。この装置はリニアック型FEL装置で、電子ビーム発生源としてRF電子銃を採用することで大幅な装置の小型化を実現したものです。

FELを発振させるためには、まず始めにRF電子銃から電子ビームを発射します。RF電子銃は、二組の加速空洞の間に結合空洞を持つOCS型(on-axis coupled structure)を採用し、ビームローディングの安定化を図るとともに、バックボンバードメントが最小となるように設計してあります。RF電子銃へは2856MHzのRFを入力し、電子ビームは電子銃の出口で約1.6MeVまで加速されています。

電子銃で発生した電子ビームは、アルファー電磁石を通すことで空間的/時間的に圧縮されます。その後、電子ビームは線形加速器により光速度近くまで加速され、光発生部に導かれます。線形加速器の加速管は、全長3 mのCG型(continuous gradient)で、2856MHzのRFを入力することにより、電子ビームは最大40MeVまで加速することができます。RFは隣室に設置してあるクライストロンから導波管を通してFEL装置室に送り込み、そこで2系統に分岐し、20%をRF電子銃に、 80%を加速管に入力しています。

光発生部に導かれた加速電子ビームはアンジュレーター(周期磁場)と相互作用し、電子ビームの運動エネルギーが放射光に変換されます。発生する放射光の波長はアンジュレーターの磁場強度によって決定されます。アンジュレータは永久磁石(SmCo)ピースを上下に配置し、43周期の変調磁場を電子ビームに印加する仕組みになっており、磁場強度はSmCoの上下間隔を変えることで調整されます。加速電子ビームが磁場との相互作用することで発生した放射光は、アンジュレータの左右に配置した光共振器ミラー間に蓄えられ、順次加速されてくる電子ビームと相互作用してレーザー光となります。光共振器の蓄えられたFEL光は、光共振器ミラー中心部に設けられたカプリングホールを通してFEL利用実験室に導光されています。

1-2. MIR-FELの光特性

各実験室に供給される光は5 Hzのパルス状であり、図4に示したとおり持続時間2 µsのマクロパルスの中で1-2 psの幅を持つマイクロパルスが約350 psの間隔で発振しています。

図4: 【MIR-FEL発振パルス】

本センターMIR-FEL装置の発振可能波長範囲は5-14 µmで、装置室における最高ビーム強度は1マクロパルスあたり50 mJ程度です。(FELはミラーを用いて各実験室に導光されるため、実験室で利用できる光強度は数割減少します。) FELは入射する電子ビームのエネルギーによって発振範囲やパワーが変化します。図5は入射電子ビームのエネルギーを変化させて、発振FEL強度を比較したものです。入射電子ビームのエネルギーが高い場合にはFEL発振範囲が高エネルギ側(短波長側)にシフトし、入射電子ビームが低エネルギーの場合には長波長側にシフトしていることがわかります。図6には実際に供給されるFELのスペクトルの一例を示しました。図の例では7.5 µmにおけるFEL発振でスペクトルの半値全幅が約0.1 µmであり、波長分解能は約1:75程度ですが、最適条件下では1:100-150程度の分解能まで到達可能です。

図5: 【FEL強度の波長依存性】

(FEL強度は装置室での測定値)
図6: 【FEL光の波長分解スペクトル】
表2: 【MIR-FEL特性】
波長可変範囲5-14 µm
バンド幅≈1.0 %
ミクロパルス幅2 ps
ミクロパルスエネルギー8-25 µJ
ミクロパルス間隔350 ps
マクロパルス幅2 µs
マクロパルスエネルギー‹50 mJ
マクロパルス繰返し5 Hz

2. FIR-FEL

遠赤外/テラヘルツ領域は、分子の回転運動に共鳴する波長帯であり、かつ電磁波としての透過性も持っていることから、固体物性分野(磁気物性、超伝導現象、量子素子など)、バイオ分野(タンパク質機能解析など)、撮像技術分野(歯の透視、ICパッケージ内視、食品等の水分含有量測定など)等において応用の可能性が指摘されています。

そこで東京理科大学では、文科省学術創成研究プロジェクト「赤外自由電子レーザーの高性能化とそれを用いた光科学」の一環として、MIR-FEL装置開発の経験をベースとすることにより、RF電子加速管を用いたFEL装置の開発に着手しています。RF電子銃、アルファー電磁石、加速管は基本的にMIR-FEL装置と同等のものを用い、光共振器(アンジュレータ、共振器チャンバー、共振器ミラーを含む装置)を新たに開発しました。この装置は安定したFEL発振に向けて現在調整中です。


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