細胞の外壁バリアー機能


 糖鎖の末端にはシアル酸というマイナスの電荷を持った糖が結合しています。


 人体を構成するすべての細胞はその細胞膜上に糖タンパク質や糖脂質といった形で糖鎖を発現し、細胞表面は糖鎖で被われています。

 細胞表面にはマイナス電荷の層が形成されることになります。



 例えば、血管の中を流れる赤血球やリンパ球もこのマイナス同士の反発により、リニアモーターカーのようにスムーズに流れると考えられます。

単語帳
eythrocyte 赤血球 glycolipid 糖脂質
blood vessel 血管 glycoprotein 糖タンパク質
cell membrane 細胞膜 charge 電荷
cytoplasm 細胞質

 

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生命の多様性の表現分子、エスケープ装置


 遺伝子にコードされたタンパク質は完全なコピー分子が作られます。


 糖タンパク質では、タンパク質の同じ位置に色々な構造の糖鎖が結合しています。


 これを糖鎖のミクロ不均一性と言います。
 


 バリアーの厚みを増し、機械的な強度を上げたり、単一の破壊活動によって全滅しないエスケープ機能をもたらしていると考えられます。


単語帳
 
microheterogeneity ミクロ不均一性 modification 修飾
carbohydrate chain 糖鎖 charge 電荷

 

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ウイルスの感染


 この破壊活動の典型例がウイルスの感染です。


 ウイルスは糖鎖バリアーの末端にあるシアル酸に結合するタンパク質(ヘマグルチニン)とそのシアル酸を加水分解するシアリダーゼを持っています。


 リアーに結合した後、邪魔物を排除し、宿主の細胞に遺伝子を送り込む様は、特殊部隊さながらです。
 
 

単語帳
NANA N-アセチルノイラミン酸
(シアル酸の一種)
spike protein スパイクタンパク質
(ウイルスの細胞膜外表面に突き出ている)
sialidase シアリダーゼ
(シアル酸加水分解酵素)
hemagglutinin ヘマグルチニン
(血球凝集素)

 

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バイオシグナルの受容体の誕生


 ウイルスの感染には、たんなる破壊活動ではない一面もあります。


 ウイルスは自己複製のため宿主の生合成系を使い、ヘマグルチニンとシアリダーゼを宿主の細胞上に準備します。


 この細胞が生き残れば同種の細胞と特異的に結合する能力を手に入れたことになります。


 
 

単語帳
nucleocapsid ヌクレオキャップシド
(核酸とタンパク質からなる)
infected host cell 感染した宿主細胞
adhesion molecule 接着分子 uminfected host cell 未感染の宿主細胞
virus particle ウイルス粒子

 

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人体でバイオシグナルとして働く糖鎖


 人体内で炎症がおこると、L-セレクチンやE-セレクチンといった糖鎖結合性のタンパク質が血管内皮細胞上にエキソサイトーシスにより出てきます。


 セレクチンはシアリルルイスX(SLeX)という糖鎖に結合します。


 シアリルルイスX(SLeX)は単球や好中球に発現されていて、他の赤血球などには発現されていません。


 すぐに役立つ貪食細胞を炎症部位に向かわせ、野次馬は整理する役目を果たしています。


単語帳
erythrocyte 赤血球 monocyte 単球
E-selectin E-セレクチン
(シアリルルイスXに結合するタンパク質)
macrophage マクロファージ(血管から出た単球が分化したもの)
platelet 血小板 inframation 炎症
neutrophile 好中球 vascular system 血液系
endotherial cell 内皮細胞 limphocyte 白血球

 

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神経細胞の分化標識


 神経細胞のおおまかな分化の過程を示しました。


 各段階で細胞表面に発現される糖脂質が変化することが知られています。


 分化開始シグナルなのか、その段階の細胞にとって必要なシグナルなのかは不明であり興味深いところです。


 

単語帳
expression 発現 neurogenesis 神経の形成
ganglioside ガングリオシド
(糖脂質の一種ですべての細胞にあるが、最初に、神経細胞より単離されたので、こう呼ぶ。)
GD3/GQ1b
GD1a/GT1b
GM1/GM4
ガングリオシドの特定の構造を示す略号

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生物進化の加速装置


 糖鎖は遺伝子に起こった小さな変化を、細胞上に大きな変化として写し出すモニターであると考えられます。。


 その変化が、致命的であればネクローシス(炎症を伴う激しい死)かアポトーシス(食細胞によって穏やかに除かれる)によって排除される。


 増殖を制御するブレーキの故障を引き起こせば、腫瘍の発生となります。


 実際、腫瘍細胞の表面には正常細胞とは異なる糖鎖が多数発現されています。


 種の存続にとって有利な性質が発生すれば、進化と呼ばれることになります。


 糖鎖の変化が新たなウイルスの受容体となれば、新たな遺伝情報を受け取ることになります。

単語帳
necrosis ネクローシス
壊死
tumor 腫瘍
apoptosis アポトーシス evolution 進化

 

 これで終わりです。お疲れさまでした。
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